想定読者
複数のAIツールを業務に導入し始めた、または導入を検討している中小企業の経営者・情報システム担当者を想定しています。
AIに作業を任せたいものの、進行状況や品質をどう管理すればよいか、人がどこまで関わるべきかに悩んでいる方に向けた内容です。
要点
- 当社の社内用バーチャルオフィス「クリエイティブオフィス」は、ブログ記事づくりのAI「社員」7人体制から、セキュリティ点検とメルマガ下書きの担当を加えた10人体制(社内の担当8人+外部AI2人)になりました
- 仕組み(画面→Googleドライブ(法人契約のGoogle Workspace)→社内のMac mini)と、「AIは下書き・点検・申請まで、判断は人(CEO)」という境界線は変わらず、新しい担当にも同じ考え方が通っています
- セキュリティ担当(まもる・あぷり子)は「点検と申請」まで、メルマガ担当(あいり)は「下書き」まで。対策の実施や配信は、人の承認・確認のあとです
なぜ「オフィス」という形でAI活用を見える化したのか

2026年10月1日にご紹介した記事を、メンバーが増えたことに合わせて改訂しました。
なお、本文の情報は2026年10月3日時点のものです。
AI活用が増えるほど進行管理が難しくなるという課題

複数のAIツールを業務に取り入れていくと、「どのツールに何を頼んだか」「今どこまで進んでいるか」「最終的に誰が確認して公開するか」が見えにくくなっていきます。
チャット画面を行き来しているうちに、依頼した内容と進捗がばらばらに散らばってしまうことも少なくありません。
当社でもBusiness TIPsの記事をはじめ、複数のサイトやブログで継続的にコンテンツを作っており、AIに任せる業務が増えるほど「誰が・何を・どこまで進めているか」を一目で把握できる仕組みが必要になりました。
そこで考えたのが、AIの担当者を「オフィスで働く社員」に見立てて、進行状況をそのまま画面で見える化するという方法です。
担当が増えた今も、この考え方は同じです。
画面はClaudeで作った社内専用ページ(社外非公開)

この画面は、Claude(Anthropic社のAIアシスタント)のArtifact機能(Claudeで作成・共有できるWebページの機能)を使って自社で作ったものです。
社内専用のページであり、一般には公開していません。オフィスの見取り図の中にAI社員それぞれの席があり、作業中・完了・エラーといった状態に応じて吹き出しや表情が変わる仕組みになっています。
見える化によって人が安心して任せられる範囲を広げる考え方

進行状況が画面上で常に見える状態になっていると、「今どの記事が誰の手元にあるか」「レビュー待ちの案件がどれだけ溜まっているか」がひと目で分かります。
これにより、人がすべての工程を逐一確認しなくても、要所の判断だけに集中して任せられる範囲を安心して広げていけると考えています。
見える化は単なる演出ではなく、AIへの権限委譲を進めるための土台という位置づけです。記事づくりだけでなく、セキュリティ点検やメルマガの下書きといった新しい業務を任せられたのも、この土台があったからです。
仕組みの構成|画面→Googleドライブ→Mac miniで回る自動化

クリエイティブオフィスの裏側の仕組みは、次のような流れで動いています。
- 画面上でAI担当に「案件」(テーマや詳細、必要であれば参考資料)を渡す
- 指示がGoogleドライブの共有フォルダに置かれる
- 社内のMac miniで常時動いている仕組みが指示を検知し、着手する
- 進み具合と結果が画面に返り、担当者の動きとして反映される
10人体制になっても、この基本の流れは変わっていません。
案件が進む4つの状態(待機中・作業中・レビュー待ち・完了)

それぞれの案件には「待機中」「作業中」「レビュー待ち」「完了」という4つの状態があります。AIが自律的に進められるのは「レビュー待ち」までで、そこから先の「完了」とするかどうかは必ず人が判断します。
この境界線を仕組みとして固定している点が、クリエイティブオフィス運用の基本的な考え方です。
指示が1〜2分で動き出し、30秒おきに画面へ反映される仕組み

社内のMac miniは1分おきにGoogleドライブ上の指示を確認しており、新しい案件が置かれるとおおむね1〜2分以内に着手します。
作業の進み具合と結果は、30秒おきに画面へ反映される仕組みになっているため、人は画面を見るだけで現在の状況をほぼリアルタイムに把握できます。
カレンダーに予定を入れるとその時刻に担当が動き出す

画面にはカレンダー機能もあり、ここに予定を入れておくと、指定した時刻に該当の担当者が自動的に作業を始めます。
あらかじめ予定を入れておけば、その時刻にあらためて指示を出さなくても案件が進んでいく仕組みです。
10人のAI「社員」と役割分担|7人から増えた3人と、記事は当社の知財が土台

クリエイティブオフィスには、2026年10月3日時点で、10人のAI「社員」がそれぞれの席で持ち場を担当しています。
内訳は社内の担当8人と外部AI2人です。ブログ記事づくりの7人体制に、2026年10月2日からセキュリティ担当の「まもる」「あぷり子」と、インサイドセールス担当の「あいり」が加わりました。
| 愛称 | 担当 | 勤務 |
|---|---|---|
| めい | マネージャー | 平日 8:30〜18:30 |
| てまり | WEB制作 | 平日 9:00〜18:00 |
| こころ | マーケティング | 平日 9:00〜18:00 |
| むすび | ネットワーク | 月〜土 9:00〜18:00 |
| めろ | AI音楽 | 火〜土 11:00〜20:00 |
| あぷり子 | アプリのセキュリティ | 平日 9:00〜18:00 |
| まもる | Webサイトのセキュリティ | 毎日 24時間 |
| あいり | メルマガの下書き | 平日 9:00〜18:00 |
| じぇむ | 外部AI・画像生成 | 平日 10:00〜19:00 |
| りふぁ太 | 外部AI・コード再評価 | 月・火・木・金 10:00〜19:00 |
勤務は画面の初期値であり、今後の運用にあわせて見直す可能性があります。
社内の担当8人と外部AI2人の顔ぶれ

マネージャー役の「めい」は、週単位の記事計画づくりや依頼の振り分け、下書きの一次チェック、毎朝の報告を担当しています。
「てまり」はquadcom.jpのブログ記事、「こころ」はマーケティング関連の記事、「むすび」はネットワーク関連の記事を担当します。
「むすび」は、ネットワーク用のWebサイトのSSL証明書(サイトの安全な通信を支える電子的な証明書)の期限の見張りも受け持っています。
「めろ」はAI音楽レーベル「TOKYO POP STUDIO」のサイトの記事を担当しています。
レーベル自体の記事に加えて、所属アーティストのサイトに掲載する記事も、本人が書いた日記という体裁で作成します。
これら5人の文章の生成にはClaudeを使用しています。
外部AIの「じぇむ」は、GoogleのAI「Gemini」を使って、記事のアイキャッチ画像や図解を作ります。
もう一人の外部AI「りふぁ太」は、当社のアプリのコードをセキュリティの観点で見直す担当です。
コードは読むだけで、変更はしません。毎晩、前の晩から変わったファイルだけを、社内のMac miniで動くAIが一次点検します。
このAIはMetaの「Muse Glimmer」というローカルLLM(自社の機器の中で動く言語モデル)で、非力なため、コード全体ではなく変化した部分だけを見ます。
その蓄積があるおかげで、より深い点検では確認すべき箇所が定まります。深い点検はOpenAIの「Codex」で行いますが、人が依頼したときだけです。
指摘は、画面の「再レビュー」タブにまとめて表示されます。
こうして、文章・画像・コードそれぞれに適したAIを使い分けています。
記事づくりは当社の知財が土台|めいの一次チェック

ここで強調しておきたいのは、AIが書くブログ記事は、当社がこれまでBusiness TIPsなどで積み上げてきた知財が土台になっているという点です。
AIがまったくのゼロから内容を創作しているわけではなく、公開済みの記事や社内に蓄積された知見・ノウハウを参照しながら、重複のないテーマと構成を選び、文章を組み立てています。
この仕組みは、当社の専門性や実績を効率よく発信するための手段であり、AI任せの量産を目的としたものではありません。
また、マネージャー役の一次チェックの工程では、依頼や参考資料にない数字・社名・事例を勝手に作っていないか、書かないと指定されたことを書いていないかを確認する仕組みも組み込んでいます。
問題が見つかった場合は自動で修正を促しますが、人の判断が必要な内容についてはそのまま残し、最終的な確認は人が行います。
セキュリティ担当:まもる(Webサイト)とあぷり子(アプリ)|点検と申請まで、対策は人の承認後

新しく加わった「まもる」は、当社のWebサイト(quadcom.jpやTOKYO POP STUDIOのサイトなど)のセキュリティ点検を担当します。
「あぷり子」は、当社の業務アプリ群「Q-Tools」などアプリのセキュリティ点検の担当で、Q-Toolsのブログ記事も受け持つ予定です。
二人の点検の仕組みは同じで、見つけたことを対象ごとに振り分けます。
点検は2段構えです。
- 外からの点検(毎時):利用者と同じようにサイトを見て、つながるか、証明書の残り日数、改ざんの兆し(見覚えのない外部のスクリプトやスパムのリンクが増えていないか)、不審な転送、DNS(ドメイン名と接続先を結びつける設定)が勝手に変わっていないかを確かめます
- サーバーの中からの点検(毎日・深夜):読み取りだけを行い、サイトのファイルが公式の配布物と同じか、不審なファイルが無いか、ログインやアクセスの傾向に変化が無いかなどを見ます。初回は今の状態を基準として記録し、2回目からは差分で判断します
結果は「重大」「注意」「情報」に、決まった基準で機械的に振り分けます。重大または注意を見つけたときだけ、何が起きたか・影響・対策案・元に戻す方法を書いた「申請」を、画面の「セキュリティ」タブに出します。
重大なものはメールでも知らせます。異常がなければAI(Claude)は使いません。
画面の中では、点検のたびに「まもる」が巡回します。そして問題を見つけた担当は、マネージャーではなくCEOの席へ直接報告に歩いていきます。
大事なのは、いまは「点検と申請」までで、サーバーには何も変更しないという点です。人が承認した対策(不審なファイルの隔離、WordPressの更新、攻撃元の遮断。実施前には必ずバックアップを取ります)をAIが実施する仕組みは、次の段階として準備中です。
その段階に進んでも、パスワードの変更、ユーザーの削除、データベースの直接編集、サイトの停止などはAIが行いません。
「見つけて、整理して、判断材料を揃える」ところまでをAIが担い、「やるかどうか」は人が決めます。
これは記事づくりの「AIはレビュー待ちまで」と同じ考え方です。
インサイドセールス担当:あいり|メルマガの下書きまで、配信は人が確かめてから

「あいり」は、当社のメール配信ツール「mails」で、お客さま向けメールマガジンの下書きを作る担当です。
隔週の月曜の朝に、直近2週間にquadcom.jpで公開した記事から3〜5本を選び、件名・前書き・紹介文を書いて、mailsに下書きとして保存します。
紹介文は、記事に書いてあることだけで書きます。1回目は2026年10月5日(月)の予定で、この記事の改訂時点(10月3日)ではまだ配信していません。
AIにできるのは、下書きの作成と配信結果の読み取りだけです。配信は、人がmailsで内容と宛先を確かめてから行います。
AIからは配信も予約もできない作りにしてあります。今後は、開封やクリックなどの結果を読み取って分析し、次号の計画を立てる機能を準備中です。
画面の中の様子と、10人になった今のまとめ
ここからは、実際に画面の中でどのような様子が見られるのかをご紹介します。下の画像は、10人になった今のクリエイティブオフィスの画面(デフォルトテーマ・平日の15時)です。
新しく加わった3人がわかるように、撮影のときは「あぷり子」「あいり」「まもる」に作業中の吹き出しを表示しています。

壁には日付とデジタル時計が表示されています。前の列の右端が「あいり」、その左が「あぷり子」、右下の出入口の横が「まもる」の席です。右側の点線で囲まれた「パートナー席」には、外部AIの「じぇむ」と「りふぁ太」が座っています。
2列になった席と、出入口の横で見張るまもる|テーマ・勤務表・CEO席への直接報告
10人になり、担当の席は後ろの列と前の列の2列になりました。「まもる」の席は出入口の横で、隣にはサーバーの棚があります。
見た目にも違いがあり、「まもる」は帽子、「あいり」は片耳のヘッドセット、「あぷり子」はリボンを付けています。

オフィスの見た目は3つのテーマから選べます。スーツ姿でフォーマルな雰囲気の「デフォルト」、カウンターやエスプレッソマシンのあるカフェ風の「カフェ」、空と海が見える開放的なテラスでアロハシャツを着て働く「リゾート」です。
服装や内装がテーマごとに変わります。
AI社員にはそれぞれ勤務表が設定されており、出勤時刻に出社し、退勤時刻に帰るという動きをします。
「まもる」だけは毎日24時間の勤務です。勤務時間外に依頼が届いた担当者は「呼び出し出勤」という形で対応します。
画面の時計は実際の時刻をそのまま表示しており、早回しはしていません。工程をありのまま見える化することが目的だからです。
テーマや勤務表の仕様は、2026年10月3日時点のものであり、今後の運用改善にあわせて見直される可能性があります。
会議室・休憩スペース・来客対応など「人が働く場所」らしさを出す工夫

手の空いたメンバーが、壁際の会議室に集まってミーティングをする様子が演出として表示されることがあります。
休憩スペースにはカフェ風の小さなテーブルとカウンターがあり、お昼の時間帯には、メンバーがコーヒーを飲みながら軽食をとる様子が描かれます。
こうした演出は、単なる遊び心ではなく、「人が働く場所」としての親しみやすさを画面に持たせる狙いがあります。

ランチの配達や飲み物の販売、宅配便の来客が訪れる様子も時折表示されます。来客があると出迎えて会議室で打ち合わせをし、見送るという一連の演出も用意しています。
夜になるとメンバーは退勤し、CEO席の横にある仮眠ベッドでCEOが休んでいる様子も描かれます。
まとめ|人は判断、AIは下書き・点検・申請まで

クリエイティブオフィスは、ブログ記事づくりのAI「社員」7人体制から、セキュリティ点検とメルマガ下書きの担当を加えた10人体制(社内の担当8人+外部AI2人)になりました。
画面→Googleドライブ→Mac miniという構成で指示が自動的に処理され、案件が「待機中」「作業中」「レビュー待ち」「完了」の4つの状態で管理される点は、これまでと変わりません。
役割分担の考え方も一貫しています。
- 記事づくり:AIは「レビュー待ち」まで。計画の承認、下書きのレビュー、公開は人が判断します
- セキュリティ(まもる・あぷり子):AIは「点検と申請」まで。対策の実施は、人の承認のあとです
- メルマガ(あいり):AIは「下書き」まで。配信は、人が内容と宛先を確かめてから行います
AIが書く記事そのものも、当社がBusiness TIPsなどで積み上げてきた知財を土台にしています。
複数のAIツールを業務に取り入れる際は、担当を増やすたびに「どこまでAIに任せ、どこから人が関わるか」の境界線を先に決めておくことが大切です。
境界線が決まっていて、進行状況が見えていれば、新しい業務も安心して任せられます。今回ご紹介した仕組みが、同じような課題を抱える企業の方にとって、ひとつの参考になれば幸いです。
