日本のGDP順位がまた下がった?ネガティブに考える前に、自社ができること|人×仕組み×売り方で付加価値を上げる考え方と、お金と幸福についての私の考え

想定読者

経済ニュースは目にするものの、GDPや生産性の話が自社とどうつながるのか実感できていない中小企業の経営者・管理職・担当者の方に向けた記事です。

専門用語に詳しくなくても読めるよう、かみくだいて説明します。

要点

  • GDPの順位は為替と人口に大きく左右されますが、1社ごとに変えられるのは「付加価値」です。付加価値は、人(リスキリング)×仕組み(システム・Q-Tools)×売り方(マーケティング)の掛け算で決まると私は考えています。
  • 架空のネットワーク構築案件の図で付加価値の積み上げを理解し、自社のどこに穴があるかを点検できます。
  • お金と幸福については、研究で確認できた範囲と、「私の考え」を分けてお伝えします。

ニュースの「GDP順位の低下」は、自社の何を表しているのか

経済ニュースを見ながら自社のことを考える経営者の様子

「日本のGDPの順位が下がった」というニュースを見ても、自社の仕事とは遠い話に感じる方は多いと思います。

私も長くそう感じていました。ただ、このニュースは読み替え方次第で、自社の経営に直結する話になります。

GDPとは「誰かが受け取ったお金の合計」

売上から仕入れを引いた上乗せ分を足し合わせるとGDPになる流れの図

GDP(国内総生産)は、1年間に国内で新しく生み出された価値の合計のことです。難しく聞こえますが、「国内で誰かが受け取ったお金の合計」と考えると分かりやすくなります。

売上から仕入れ分を引いた「上乗せ分」を、全員分足し合わせたものです。この上乗せ分を、以降「付加価値」と呼びます。

順位が動く2つの理由:為替と人口

為替と人口が順位を動かし、1社で変えられるのは付加価値だと示す図

順位を動かす大きな要因は、為替と人口です。国際比較ではドルに換算するため、円の価値が変わるだけで順位は動きます。

円ドルの年平均は、1985年が約238円、1995年が約94円、2025年が約150円でした(出典:FRED 円ドル為替レート(米連邦準備制度理事会))。

世界のGDPに占める日本のシェアは、1995年の17.6%がピークでした(出典:選択する未来(内閣府))。

2025年は約3.8%と計算できます(出典:globalnote(IMF統計の集計))。順位は下がってきており、為替の影響が大きいことは確かです。

もう1つは人口です。生産年齢人口(働き手の中心になる世代)は1995年をピークに減り続け、2050年には2021年比で29.2%減の5,275万人になる見込みです(出典:令和4年版情報通信白書(総務省))。

GDPの順位が下がっている理由をやさしく読み解く

ここまでで、順位が為替と人口に左右されることをお伝えしました。この章では、経済に詳しくない方にも伝わるよう、なぜ順位が下がって見えるのかを順番に整理します。

円安だと、なぜドルで見たGDPが小さくなるのか

同じ600兆円でも、1ドル100円なら6兆ドル、1ドル150円なら4兆ドルになることを比べた図(架空の計算例)

国どうしのGDPを比べるときは、各国のお金を同じ通貨、ふつうはドルに換算します。そのため、国内で同じだけ稼いでいても、1ドルが何円かによって、ドルで見た金額は大きく変わります。

次の表は、説明のための架空の計算例です。実際の数字ではありません。

為替円でのGDP(仮)ドルでのGDP
1ドル100円600兆円6兆ドル
1ドル150円600兆円4兆ドル

円で見た金額はどちらも600兆円で、国内で稼いだ量は変わっていません。

それでも、1ドル100円なら6兆ドル、1ドル150円なら4兆ドルになります。円安になるほど、ドルで見たGDPは小さく見えるということです。

日本の世界シェアが最も高かったころ

世界のGDPに占める日本のシェアが最も高かったのは、1995年の17.6%です(出典:選択する未来(内閣府))。

この年の円ドルの年平均は約94円で、かなりの円高でした。

一方、2025年の年平均は約150円の円安です(出典:FRED 円ドル為替レート(米連邦準備制度理事会))。

円高のときはドルで見たGDPが大きく見え、円安のときは小さく見えます。シェアが最も高かった1995年が円高の年だったことは、順位やシェアを読むときに知っておきたい点です。

円高の時期に経済が伸びていたわけではない

円で見た名目GDPが1995年の約522兆円から2023年の約593兆円へ移り変わる様子を示す年表

ここまで、ドルで見たシェアは円高の時期に大きく見えるとお伝えしました。では、そのシェアが大きかった時期に、日本の経済そのものも伸びていたのでしょうか。

これを確かめるには、ドルではなく円で見た名目GDPを並べるのが近道です。名目GDPは、物価の上昇分も含んだ値です。

年円で見た名目GDP目安
1995年約522兆円シェアが最高の年
2011年約497兆円約79.7円の円高
2012年約500兆円約79.8円の円高
2013年約509兆円アベノミクス開始の年
2023年約593兆円円安が進んだ後

(出典:長期経済統計 国民経済計算(内閣府))

円で見た名目GDPは、1995年の約522兆円から、2011年は約497兆円、2012年は約500兆円となっています。

1995年から2012年まで伸びず、むしろ少し減っていたことになります。

この2011年と2012年の円ドルの年平均は、約79.7円と約79.8円で、記録的な円高でした(出典:G.5A 為替レート年次(米連邦準備制度理事会))。

ドルで見ると日本が大きく見えやすい時期でも、円で見た経済は大きくなっていませんでした。

一方、アベノミクスが始まった2013年以降は円安が進みました。同じ時期に、円で見た名目GDPは2013年の約509兆円から、2023年の約593兆円へ増えています。

つまり、ドルで見た順位やシェアが下がったことと、国内の経済が縮んだことは同じではありません。順位のニュースを見たときは、ドルで見た話なのか、円で見た話なのかを分けて読むことが大切です。

GDPは「国内」で生まれた価値

国内の工場で作ると日本のGDPに入り、海外の工場で作り海外で売るとその国のGDPになり日本のGDPには入らないことを示す2枚のカード

もう1つ押さえておきたいのは、GDPが「国内」で生まれた価値の合計だという点です。

日本の企業が海外の工場でものを作り、海外で売った分は、その国のGDPに数えられます。日本のGDPには入りません。

ですから、日本のGDPが下がっていることだけを見て、日本の企業、たとえば大手の製造業が弱くなったとは言えません。

GDPは「国内でどれだけ価値が生まれたか」を測るもので、企業の力そのものを測るものではないからです。

ただし、だからといって「大手製造業は強い」と言い切れるわけでもありません。企業の強さは、GDPとは別の物差しで見る必要があります。

個々の収入が上がらないのは、分けるパイが大きくならないから

では、私たち一人ひとりの収入が上がりにくいのはなぜでしょうか。

給料は、国内で生まれた付加価値、つまり「パイ」から分けられます。パイがほとんど大きくなっていなければ、1人あたりの分け前も増えにくくなります。

円で見たGDPは、1995年から2023年までの約30年で約522兆円から約593兆円と、大きくは増えていません(出典:長期経済統計 国民経済計算(内閣府))。

為替の影響を除いても、分けるパイが育っていないことが、収入が上がりにくい背景にあると私は考えています。

そのパイを大きくしていくには

為替も人口も動かせない以上、パイを大きくする力は、現場での付加価値の積み上げにあります。

では、1社ごとにできることは何でしょうか。次の章から、1社ごとの付加価値という視点で考えていきます。

為替も人口も動かせないなら、何を見るべきか

国の話を、中小企業の現場の生産性に引き寄せて読む

為替も人口も、1社の力では動かせません。

一方で、就業者は2012年から2024年にかけて約500万人増えています(出典:労働力調査(総務省統計局))。

働く人が増えても国全体の豊かさが伸び悩むなら、1人・1時間あたりの付加価値が伸びていないということです。

国のGDPは、突き詰めれば現場の付加価値の集まりです。中小企業は3,000万人以上の雇用を支えているとも言われます。

ですから、ニュースの本当の問いは「自社の1時間あたりの価値はいくらか」だと私は読んでいます。

付加価値の積み上げで考える:ネットワーク構築案件の例

付加価値のイメージをつかむために、ネットワーク構築案件を例にします。

機器100+設計・施工150+運用・保守50=顧客が払う300

機器の値段比べになりやすい例と、スキルと仕組みで上乗せする例を比べた図

次の表の数字は説明のための架空のもので、実在の案件ではありません。

工程受け取る側上乗せ分(仮)
機器の製造・販売メーカー・商社100
設計・設定・施工設計・施工会社150
運用・保守保守会社50
合計(顧客の支払い)―300

顧客が払う300は、各社が受け取った上乗せ分の合計と一致します。この「全員が受け取ったお金の合計」が、GDPの考え方そのものです。

「機器の値段比べ」ではない土俵に立つには

表の中で、機器の100は価格比較にさらされやすい部分です。

一方、設計・施工や運用・保守の上乗せ分は、担当者のスキルと仕事の仕組みで増やせます。現場に合う設計ができ、不具合を早く見つけられる会社は、機器の値段だけで比べられる土俵から抜け出せます。

付加価値が漏れる場所を見つける

付加価値が漏れる3つの場所:人・仕組み・売り方

上乗せ分が思うように積み上がらないとき、漏れている場所は大きく3つに分けられます。

漏れる場所起きがちなこと当社の対応領域
人新技術を使える人が育たないリスキリング
仕組み業務が散在し既製品が合わないシステム・Q-Tools
売り方良いものが売れる形にならないマーケティング

ITやDXの遅れは、ツールがないという話だけではありません。使いこなす人と、成果を売り上げにつなげる仕組みがないことも原因です。

3つを同時に整える

人・仕組み・売り方が掛け算で、1つでも欠けると付加価値が上がらないことを示す図

3つはどれか1つが欠けても付加価値が上がらない、掛け算の関係だと私は考えています。

ツール教育で終わらせないリスキリング(人)

リスキリング(新しい技術を学び直すこと)は、ツールの操作を覚えて終わりにしてはいけません。大切なのは、学んだことを自社の仕事の成果につなげる組織の変革として進めることです。

当社では、現場の現役エンジニアが講師を務める実践型で、ネットワークやAIのビジネス活用をハンズオン(手を動かす形式)で扱っています。

必要な機能だけを無理のない費用で整える仕組みづくり(仕組み)

大規模なDX投資をしなくても、必要な機能だけを組み合わせる方法があります。当社は自社で必要になったツールを自社で開発・運用しており、業務に合わせた調整にも対応しています。

既製品を入れても合わない部分が残るときは、現場に合う仕組みを設計し直すのが近道です。

技術とビジネスを分けない考え方(IX)と、理念「好奇心は社会に価値をもたらす」

当社は、プロダクト開発からマーケティング、デジタル活用による業務効率化までを一体で支援する考え方を、IX(産業変革)と呼んでいます。

技術だけ、営業だけと分けると、付加価値はどこかで漏れます。「知りたい」「やってみたい」という好奇心を出発点に、核心を見極めて新しい価値をつくる。

それが当社の理念でもあります。

各領域の詳細は、次のページに掲載しています。リスキリング/ワークツール/システムデザイン/マーケティングデザイン

お金と幸福についての私の考え

研究で確認できたことと、筆者の考えを左右に分けて示した比較図

付加価値を上げた先に何があるのか。最後に、お金と幸福について考えてみます。

研究で確認できた範囲

米国の研究に、収入と気分の関係を調べたものがあります。年収がおよそ10万ドル(1ドル150円で約1,500万円)までは、もともと幸福度が低い人の幸福度は収入とともに上がり、それ以降は横ばいになりました。

一方、幸福度がもともと高い人は、収入が増えるほど幸福度も上がり続けていました(出典:Killingsworthらの2023年の研究の解説(Princeton大学))。

なお、1,500万円は換算上の目安で、日本の生活水準と同じ意味ではありません。

もう1つ、別の米国の研究では、本人の収入が同じでも、近所の人の収入が高いほど本人の幸福度が低いと報告されています(出典:Luttmerの2005年の研究(NBER))。

人は周りと比べる生き物だということです。

ここからは「私の考え」

ここからは研究結果ではなく、私自身の考えです。

収入は、一定額を超えると幸福を測る物差しにはならないと私は考えています。大切なのは次の2つです。

  1. 他者と比べることに固執せず、自分の「身の丈」を知ること。比べる相手は際限なく上がるので、身の丈を知らないと、どこまで行っても足りなく感じてしまいます。
  2. 何気ない日常に価値を見出す視点を持つこと。満たされるかどうかは、いくら持っているかより、今あるものをどう見るかで決まる部分が大きいと感じています。

自社の穴を点検して「十分」を決める

自社の付加価値の穴を点検する問いと、「小さくても強く、豊かな」会社

国も会社も、順位や数字を追うだけでは終わりがありません。「自分たちにとっての十分」を決めたうえで、その中の価値を高めていく。

これが、当社の考える「小さくても強く、豊かな」あり方です。そのための第一歩として、自社の穴を点検してみてください。

自社の付加価値の穴を点検するチェックリスト

  • [ ] 自社の仕事を工程ごとに分け、どこで上乗せ分が生まれているかを確認した
  • [ ] 価格だけで比べられやすい工程がどれかを確認した
  • [ ] 新しい技術を仕事の成果につなげる学び直しの機会があるかを確認した
  • [ ] 業務が個人のパソコンや紙に散らばっていないかを確認した
  • [ ] 既製のツールが合わず、手作業で補っている部分を洗い出した
  • [ ] 自社の強みが顧客に伝わる形になっているかを確認した
  • [ ] 技術担当と営業・販売担当が同じ目標を共有しているかを確認した
  • [ ] 自社にとっての「十分」とは何かを話し合った

国全体の動きは変えられなくても、自社の1時間あたりの価値は今日から変えられます。そのための道具である人・仕組み・売り方は、すでに揃っています。

進め方に迷ったときは、お気軽にご相談ください。

▼略歴

1970年 東京都世田谷区生まれ。
少年期を豊かな自然に囲まれた栃木県日光市で過ごす。
趣味は山歩きや渓流釣り、そして中学生の頃から始めたパソコンとBASICのプログラミングでした。
部活は陸上部に所属。短距離走や砲丸投げの選手で、度々表彰されていました。
高校からギター部に入ってギターを学び、作詞・作曲をするようになりました。上京後、路上ライブをしたりしていました。

高校・専門学校にて経営・財務の分野を学ぶ。
新卒で建設・不動産業界の経理部に就職し、次の業務を経験。

  • 住宅ローンアドバイザー

パソコン販売専門チェーンにて、次の業務を経験。

  • 複数店舗のマネージャー
  • PCソフトウェアのマーチャンダイザー

家電メーカーグループ企業にて、次の業務を経験。

  • 直営店舗の運営と商品のマーチャンダイザー
  • PCのBTOビジネスや家電ホームネットワークの普及推進
  • デジタル一眼の使い方セミナーの講師
  • WEBマスターとして、ポータルサイト、イントラサイト、楽天などのeコマースサイトの制作・運営
  • 情報セキュリティマネジメント(ISMS)とナレッジマネジメントの推進
  • 銀座のツーリスト向け店舗に勤務

家電量販店にて、次の業務を経験。

  • 六本木の店舗にて店長を経験
  • 店舗開発部での営業支援(新店舗出店時のレイアウト設計や出店準備、VMDの企画・制作など)

ホテル宴会場などの常駐イベント支援やAVシステム事業を行う業界中堅企業にて、インテグレーターとして次の業務を担当。

  • 手術室・血管造影室の画像・映像配信システムの開発・設計とエンジニアリング
  • 医療向けシステムやフェリーの設備を安全にリモートメンテナンスするソリューションの開発・運用
  • メディカル部門のマネージャーを経験

同企業にて、全社の事業推進プロジェクト部門に参画し、次の業務を経験。

  • 室長と共に、ゼロからデジタルマーケティングの仕組みを立ち上げ
  • 会社のリブランディングプロジェクト

SaaS開発・販売企業にて、次の業務を経験。

  • セールスエンジニア

アプリ開発の設計や仕組みを学びました。

  • 論文 医師偏在の課題と向き合う遠隔手術支援ソリューション(CiNiiで検索)
  • 論文 手術室の生産性向上に貢献する医療映像ソリューション(CiNiiで検索)
  • 現在、企業向けにIT技術者育成セミナー(ネットワーク/企業のAI導入等)を行っています。