想定読者
広告や地図検索の口コミ対応は進めているものの、自社からお客様に声を聞く仕組みがなく、サイト・チラシ・提案資料に載せる感想や実績が足りない中小企業の経営者・販促担当者の方です。
専任の担当者がいなくても、無料のフォームツールや紙を使って少人数で始めたい方に向けて書いています。
要点
- アンケートは3〜5問に絞り、質問を作る前に「どこに使う声か」を決めます
- 聞くタイミングと渡し方を決め、回答は台帳に整理して何度でも使い回せる形にします
- 販促物に載せるときは、掲載範囲・表記・撤回の取り決めを記録に残し、加工や誇張は避けます
広告や口コミ返信より後回しになる「自社で集めるお客様の声」

広告は出している。地図検索の口コミにも返信している。それなのに、いざ提案資料を作ろうとすると「お客様がどう感じたか」を示す材料がなく、サイトもチラシも自社の言葉だけで組み立てている。
そんな場面に心当たりはないでしょうか。
自社の言葉だけの資料は、どれだけ丁寧に書いても「自分で自分を褒めている」ように読まれがちです。
第三者であるお客様の一言が1行あるだけで、説得力は大きく変わります。
それでも、この作業は広告や口コミ返信に比べて締め切りがなく、後回しになりやすいものです。
自社主導で集める声と、地図検索の口コミ対応は何が違うか
地図検索などの口コミは、お客様が自発的に書いてくれるのを待つ「受け身」の声です。いつ、誰が、何について書くかは自社では決められません。
返信はできても、集めることはできません。
一方、この記事で扱うのは、自社が聞きたいことを決め、聞きたい人に、聞きたい時に尋ねる「主導する」声です。
質問を設計できるので、サイトに載せたい「選んだ理由」や、提案資料に載せたい「導入後の変化」を狙って集められます。
口コミへの返信は別の取り組みとして続けつつ、ここでは自社が動いて集める部分だけに絞ります。
声が集まらないまま販促を続けると起きること
声がないまま販促を続けると、次のようなことが起きやすくなります。
- 提案資料やサイトの説明が機能や価格の列挙になり、他社との違いが伝わらない
- 「実績が少ないのでは」と不安を持たれても、裏づける材料を出せない
- お客様が何に価値を感じたのかを自社が把握できず、販促の言葉が思い込みに寄る
声は販促物の素材であると同時に、自社の強みをお客様の言葉で確かめる手段でもあります。
この記事で作るもの:質問票・回答台帳・掲載許可の取り決め
この記事では、次の3つを順に作ります。
- 3〜5問の質問票(紙でもフォームでも使えるもの)
- 回答を1行ずつ整理する回答台帳
- 販促物に載せるときの掲載許可の取り決め
特定のツールの操作手順には踏み込みません。無料のフォームでも紙でも使える、考え方と流れを中心にまとめます。
3〜5問で終わる短いアンケートの設計
先に「使い道」を決める:サイト・チラシ・提案資料で必要な声の違い
質問を考える前に、集めた声をどこに載せるかを決めます。使い道によって、欲しい声の形が違うからです。
| 使い道 | 欲しい声 | 向く質問 | 向く聞き方 |
|---|---|---|---|
| サイト | 理由と感想 | 選んだ理由・使った結果 | 購入後にフォーム |
| チラシ | 短い一言 | 一言で表すと? | 店頭で紙に記入 |
| 提案資料 | 悩みと変化 | 導入前後の変化 | 納品後に依頼 |
サイトには「なぜ選んだか」「使ってどうだったか」が分かる数行の感想が向きます。チラシは面積が限られるため、1文で言い切れる短い一言が使いやすくなります。
提案資料では、導入前にどんな課題があり、導入後に何が変わったかという流れが説得力を持ちます。使い道を決めずに質問を作ると、どこにも使いにくい中途半端な回答が集まってしまいます。
質問の型:選んだ理由・使ってみた結果・誰にすすめたいか・自由記述・掲載可否
質問は、次の5つの型から3〜5問を選べば十分です。
- 選んだ理由:なぜ当社(この商品)を選んだか
- 使ってみた結果:使ってみてどうだったか、何が変わったか
- 誰にすすめたいか:どんな人や会社に向いていると思うか
- 自由記述:その他、感じたことや改善してほしい点
- 掲載可否:回答を販促物に載せてよいか(載せる場合の表記も)
「選んだ理由」は、自社が思っていた強みとお客様が感じた強みのずれを知る手がかりになります。「誰にすすめたいか」は、次に出会うお客様に近い人の言葉として、そのまま提案の入り口に使えます。
掲載可否は必ず最後に1問入れ、詳しい取り決めは後の章で扱います。
答える負担を減らす工夫:選択式と自由記述の配分、所要時間の明示、スマホ対応
回答してもらえるかどうかは、負担の軽さで大きく変わります。次の点を押さえてください。
- 選択式を2〜3問、自由記述を1〜2問にして、全部を文章で書かせない
- 冒頭に「所要時間は約2分です」のように目安を書く
- 自由記述は必須にせず、書けない人も最後まで送れるようにする
- フォームの場合は、スマホの画面で読みやすく入力しやすいかを自分で確かめる
- 何のために使う回答かを1〜2行で添える
質問を増やしたくなったら、「この質問の答えは、どの販促物のどこに使うのか」と自問します。答えられない質問は削ります。
3つの場面で見る質問票のサンプルと、声の使い方
ここでは3つの場面で、質問文そのものと、集まった回答の使い方を示します。会社名・商品名・回答は、すべて説明のための架空の例です。
実在の数値や実績ではありません。
場面1:飲食・小売の来店後(架空の例)

来店したその場で、レシートに添えた小さなカードやQRコードから答えてもらう場面です。
- 質問1:今日、当店を選んだ理由に近いものをお選びください。(複数選択:近くだから/知人のすすめ/メニューを見て/その他)
- 質問2:今日のご利用はいかがでしたか。一言でお聞かせください。
- 質問3:このお店を、どんな方におすすめしたいですか。
- 質問4:いただいたご回答を、お店のサイトやチラシに載せてもよいですか。(載せてよい/匿名ならよい/載せないでほしい)
架空の回答例として「ひとりでも入りやすくて、野菜が主役のランチでほっとしました」が集まったとします。
サイトでは、この一文を「ご利用のお客様の声」欄にそのまま載せます。チラシでは「ひとりでも入りやすい」の部分に近い言葉を、元の趣旨を変えずに見出し代わりに使うことも考えられますが、その場合は回答者に確認します。
提案資料は使う場面が少ないため、この場面ではサイトとチラシが中心です。
場面2:制作・工事・IT保守などBtoBの納品後(架空の例)
納品後、請求や完了報告の連絡と合わせて、メールで依頼する場面です。
- 質問1:数ある会社の中から、当社に依頼いただいた決め手は何でしたか。
- 質問2:ご依頼前に抱えていた課題と、納品後に変わった点を教えてください。
- 質問3:同じような課題をお持ちの会社に、当社をおすすめするとしたらどんな点ですか。
- 質問4:その他、改善してほしい点があればご自由にお書きください。
- 質問5:ご回答を当社の資料やサイトに掲載してもよろしいでしょうか。(掲載してよい/社名を伏せてなら可/掲載不可)
架空の回答例として「問い合わせへの返事が早く、依頼前の不安が小さくなりました」が得られたとします。
提案資料では、「課題」と「変化」をつなげて、「導入前の不安が、対応の早さで小さくなったというお声をいただいています」のように紹介できます。
サイトの実績ページには、掲載許可を得たうえで、社名の表記を確認した形で載せます。BtoBでは、社名や担当者名の出し方に社内ルールがある会社も多いので、表記は必ず相手に決めてもらいます。
場面3:サービス利用開始から1か月後(架空の例)
サービスを使い始めて1か月たったころ、メールやオンラインフォームで聞く場面です。
- 質問1:このサービスを使い始めた理由に近いものを選んでください。
- 質問2:1か月使ってみて、始める前と比べて変わったことはありますか。
- 質問3:まだ使いにくいと感じる点があれば教えてください。
- 質問4:ご回答を、当社の案内に載せてもよろしいでしょうか。
使い始めて間もないこの時期は、始める前の気持ちを覚えているので、導入前後の変化を具体的に答えてもらいやすいタイミングです。
架空の回答例「毎月の集計作業が手作業から解放されて、気持ちに余裕ができました」は、サイトの事例紹介の見出し候補にも、提案資料の「導入後の変化」の一文にもなります。
ただし、「手作業から解放」のような程度を表す言い方は、実際の状況と合っているかを確認してから載せます。
聞くタイミング・渡し方と、集まった回答の整理
タイミングの決め方:購入直後・納品後・利用開始から一定期間の使い分け
聞くタイミングは、「何を聞きたいか」で決めます。
- 購入直後・来店直後:選んだ理由と第一印象を聞くのに向きます。記憶が新しいので、率直な言葉が集まります。
- 納品後:依頼の決め手と、課題の解決具合を聞くのに向きます。完了報告と同時期に依頼すると自然です。
- 利用開始から一定期間後:使ってみた結果と変化を聞くのに向きます。効果を実感するまでに時間がかかる商品・サービスは、日数を置いたほうが中身のある声になります。
一度にすべてを聞こうとせず、商品やサービスの性質に合わせて1つのタイミングから始めます。
渡し方の選択肢:QRコード・メール・同封の紙・口頭での依頼を比較する
| 渡し方 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| QRコード | 店頭・チラシ・名刺 | 読み取れる環境が必要 |
| メール | 納品後・利用開始後 | 件名で用件を明示 |
| 同封の紙 | 商品発送・来店 | 回収と転記の手間 |
| 口頭での依頼 | 打ち合わせ・訪問 | 回答の記録を残す |
QRコードはその場で回答できるため、店頭やチラシと相性がよい方法です。メールは、納品後や利用開始後に、相手のタイミングで答えてもらえます。
同封の紙は、ネットに不慣れな相手にも渡しやすい反面、回収や台帳への転記の手間がかかります。口頭での依頼は、関係の深いお客様に「一言いただけませんか」とお願いする方法で、聞いた内容は必ずその場で書き留め、後で本人に内容を確認してもらいます。
渡し方は1つに絞る必要はありません。
ただし最初は、手間が増えすぎないよう、自社の接点にいちばん合う1つか2つから始めます。
謝礼や割引と引き換えに依頼するときの注意
回答のお礼に割引や小さな特典を用意する場合は、好意的な回答だけを求めない形にします。「良い感想を書いてくれたら割引」のような条件は、結果を誘導することになり、集めた声の信頼性を損ないます。
お礼は「回答してくれたこと」に対して渡し、内容の良し悪しとは切り離してください。案内文にも、「良い点も改善してほしい点も率直にお聞かせください」と書いておくと安心です。
回答台帳の作り方:日付・商品・回答内容・掲載許可の状況・使用先を1行にまとめる
集めた回答は、そのままメールやフォームの画面に置いておくと、使いたいときに探せません。表計算ソフトや紙のノートで構わないので、1回答を1行にした台帳を作ります。
台帳に入れる項目は次のとおりです。
- 回答を受け取った日付
- 対象の商品・サービス、場面(来店後/納品後/1か月後など)
- 回答者の区分(個人/会社、匿名の希望など)
- 回答内容(原文のまま)
- 掲載許可の状況(可/匿名なら可/不可)と、許可を得た日
- 使用先(サイト/チラシ/提案資料)と、使った日
- メモ(確認が必要な点、否定的な内容かどうか)
原文のまま残しておくことが大切です。要約や編集をした版は別の欄に書き、元の言葉が失われないようにします。
使用先の欄があれば、同じ声を同じ場所に何度も載せる、あるいは許可のない場所に誤って載せるといったミスを防げます。
否定的な回答の扱い方

アンケートを始めると、うれしい声ばかりでなく、不満や要望も届きます。これは失敗ではなく、改善の材料が手に入った状態です。
- 否定的な回答は削除せず、台帳にそのまま記録する
- 改善できる内容は、担当者と期限を決めて業務の見直しに回す
- 掲載しない理由(「掲載不可の希望」「改善に回した」など)も台帳に一言残す
- 改善した場合は、可能なら回答者に「いただいたご意見をもとに変更しました」と伝える
不満を書いてくれたお客様に改善の結果を伝えると、関係が深まることもあります。
一方で、好意的な声だけを選んで載せると、実態から離れた印象を与えかねません。載せる声は選んでも、集めた声はすべて受け止める、という線を社内で共有しておくと運用が安定します。
サイト・チラシ・提案資料に使うときの許可の取り方
許可の取り方:掲載する範囲・氏名や会社名の表記・撤回の連絡先を先に示す
回答を販促物に載せるには、回答者の許可が必要です。許可は、載せる前に、次の3点を先に示したうえで得ます。
- 掲載する範囲:どこに載せるか(サイト/チラシ/提案資料)
- 表記:氏名や会社名をどう載せるか(実名/イニシャル/匿名/社名のみ など)
- 撤回の連絡先:後から載せないでほしいと思ったときの連絡先と方法
許可は、フォームの質問に含めるか、書面やメールの返信で残します。口頭でもらった許可は、必ず文字にして残します。
掲載先によって、許可の範囲は変わります。たとえば、サイトは公開範囲が広く長く残る可能性があるため、チラシや提案資料よりも慎重に確認します。
提案資料は特定の相手に見せるものですが、配布先が広がる場合は、サイトに近い扱いにします。掲載先ごとに許可の有無を台帳で分けて管理すると、混乱を防げます。
回答から個人が特定できる情報を扱う場合、集める目的(販促に使うこと)をあらかじめ伝えておくことは基本の考え方です。
個人情報の取り扱いに関する詳しいルールは、公的機関の情報で確認し、迷ったときは専門家に相談してください。
編集してよい範囲と、誇張や誤解を招く表現・やらせ的な依頼を避ける考え方

載せるときの編集は、元の意味を変えない範囲にとどめます。
- してよいこと:誤字の修正、長い文章から該当部分を抜き出すこと(趣旨が変わらない場合)、読みやすさのための軽微な整え。ただし回答者に確認する
- 避けること:言葉の追加、程度を強める言い換え、否定的な部分を除いて肯定的な印象にすること、複数の回答のつなぎ合わせ
「効果が大きかった」と書かれていないのに、「劇的に変わった」と載せるのは誇張です。実際の状況より良く見せる表現は、誤解を招くだけでなく、あとで信頼を失う原因になります。
また、お客様に「良い感想を書いてください」と文面を用意して頼む、社員や関係者が一般のお客様のふりをして書くといった依頼は、やらせにあたります。
広告の表示や景品の扱いなどには、法律や公的な指針があります。具体的な判断が必要なときは、消費者庁などの公的機関の情報を確認するか、専門家に相談してください。
声を載せる前の確認チェックリスト
- [ ] 回答者から、載せる範囲を示したうえで掲載の許可を得た記録がある
- [ ] 氏名や会社名の表記(実名・匿名など)を回答者に確認した
- [ ] 撤回したいときの連絡先と方法を回答者に伝えた
- [ ] 載せる文が、回答の原文と意味が変わっていないことを確認した
- [ ] 編集した部分があれば、回答者に内容を見てもらった
- [ ] 事実と合わない内容や、程度を強めた表現が入っていない
- [ ] 謝礼や割引を渡した場合も、好意的な回答だけを求めていない
- [ ] 台帳に掲載先と掲載日を記録した
まとめ:最初の1か月でやること

大きな仕組みを作ろうとすると、そのまま止まってしまいます。最初の1か月は、次の3ステップに絞ってください。
- 質問票を作る:使い道を1つ決め、3〜5問の質問票と、掲載可否の質問を用意します。
- 10人に聞く:自社にいちばん合うタイミングと渡し方で、まず10人に依頼します。回答は台帳に1行ずつ記録します。
- 1件を掲載する:許可を得られた声を1件選び、確認のチェックを済ませてから、サイト・チラシ・提案資料のどれか1か所に載せます。
広告や口コミ返信は、これまでどおり続けて構いません。それに加えて、自社から聞く声が1件あるだけで、資料の説得力は変わります。
まずは10人に聞くことから始めてみてください。






















