※この記事のアイキャッチ画像は、DALL·Eで生成しました。
前回、営業予算を達成するためには予材管理が重要という記事を書きました。
今回はその中でも非常に重要な部分である「白地(しらじ)」を作るための営業活動の基本について書いていきます。
この記事のインデックス
営業マンは常に顧客を見ている必要がある
「営業は常に外へ出て顧客巡回をしているものである」
頭ではそう思っていても、実際にはそうならないのが現実かもしれません。
例えば、今日は5件のお得意様を巡回しようと思っていても、
「明日のミーティング資料を作らなければならない」
「提案用の資料を作らなければならない」
「メールや資料をチェックしていたら時間がなくなった」
「提出物の期限に間に合わない」など、様々な事由で結局大半を社内で過ごす営業マンがいます。
顧客巡回の目標が達成できなくても、まるで評論家のように「たられば」の言い訳をするのが上手。常に社内のコミュニケーションに気を遣って関係者に根回ししているので、強引な言い訳でも周囲が受け入れてしまいがち。
よくある風景かと思いますが、こんなことを繰り返していると白地は一向に生まれてきません。
顧客へ目を向けている営業マンとは?
このように、社内のこと自分のことを中心に行動している営業マンがいる一方、常に顧客へ目を向けている営業マンが存在します。
優先順位は常に顧客の声に耳を傾けることですから、そのためにとにかく顧客のところへ足を運びます。
しかし、こういった営業マンに限って、提出物の期限は常に守り、顧客へのレスポンスの良さも評判が高い。
ある意味、余計なことには耳を貸さないので、相手によっては「人の言うことを聞かない」、「自分勝手だ」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、常に評論家のような言い訳をして営業成績にコミットできない営業マンと比較して、会社への貢献度は高いはずです。同僚や上司の顔色や評判ばかり気にして業績にはイマイチ貢献できていない営業マンと、果たしてどちらを増やすべきでしょうか?
やりきる習慣の大切さ
行動量が多い営業マンは、常に目標をやりきることに注力しています。
ですから、困ったことがあれば周囲を動かしてでも達成させようとします。
目標をやりきることよりも自分のこだわりやプライドに目を向けてしまう方は、
「自分がやった方がクオリティが高い」と考える傾向にあります。
そのため、他者に任せた方が効率が良いことまで自らが抱えてしまい、非効率となって目標未達に陥る場合が多々あります。
自分が手間をかけてやるべきことと、レクチャーする手間をかけても他者に任せるべきことの棲み分けが、非常に大切になってくるのです。
たとえ、自分がやった方がスピードやクオリティが高いと思っても、仕事を抱えることで発生するロスの方が遥かに高いのです。
常に「自分が向き合うべき目標は何か」と考えれば自然な発想です。
もちろん、人にものを頼む際にはきちんと顛末を見なければなりません。依頼する側がきちんと責任感を持って、相手を信じて依頼することで、どんどん自分のために高いクオリティで動いてくれる同志が出来上がっていきます。
他者の成長に協力することは、組織を作り上げてさらに高みを目指すことに繋がります。その必要性についても記事を書いていますので、参考にしてください。
常に顧客へ目を向け、目標をやりきることに注力している営業マンは、このバランスが非常に上手です。
そもそも、変に思考を重ねすぎたり完璧を追い求めたりするよりは、とりあえず行動してしまった方が早いと考える方が、営業マンには向いていると思っています。
逆に、目標達成に注力できていない営業組織は、計画を立てても定量的な行動ができず、形だけで終わります。
マネージャーは部下を評価する仕事ではなく、個々にモチベーションを沸かせる仕事です。細かな管理ばかり徹底して精神論を語っても、部下のモチベーションは上がりません。
現状と理想、そしてそこへ至るまでの乖離をどう埋めていくかを、定量的に且つ、論理的に顧客目線で計画し、個々の行動計画に落とし込むことが重要です。
やるべきことをやりきり、常にホウ・レン・ソウを欠かさなければ、上司は部下を信頼するようになります。行動量が多く、報告が常に成されていれば、自然と会議の量も減っていきます。
出先から報告が楽にできる SFA や CRM などのツールを導入することで、余った時間をさらに顧客と向き合うことに使えるのです。
御用聞きは決して無駄ではない
「何か困ったことはないですか?」
「何かいい話はないですか?」
「御用聞き営業」と言うと、必ず「御用聞きではなく、提案営業をすべきだ」と言ってくるマネージャーがいます。
本当に御用聞きは無駄でしょうか?
そして、提案営業はそんなに簡単にできるのでしょうか?
私は堂々と御用聞きをやるべきだと思っています。
とはいえ、単に「何かありませんか?」ということではなく、前提として顧客企業が属する業界の最新情報や自社製品の最近の事例などを紹介した上で、「いかがですか?何かニーズはありませんか?」と営業をかけていました。
いきなり提案書を持っていっても、相手のニーズが不明確なままでは単なる押し売りにしかなりません。
まずは、顧客がニーズを想起できるようなネタを持ち込むことが大切だと思っています。
特に白地作りのために顧客巡回しようとすると、顧客は自らのあるべき姿をまだ想像できていない可能性が高いです。
そのために必要な行動は、顧客が営業マンへ積極的に自己開示したくなるように仕向けることです。
心理学をうまく活用する
人は自己開示してくれない相手に積極的に自己開示しようとはしません。
まずは御用聞きでもいいので積極的に顔を合わせ、常に自分の持っている情報を相手に与えるということが大切です。何度も顔を合わせることで、心理学で言うところの「ザイオンス効果」が現れます。
その中に興味のある情報があれば、顧客の方も積極的に自己開示してくれるようになってきます。これが心理学で言うところの「返報性の原理」です。
相手にも多少のコストを発生させる
白地の巡回目標に合わせてアポイントを入れすぎると、顧客が要望するスケジュールに合わせられなくなると言う方がいます。
しかし、巡回の優先順位をいちいち顧客に合わせていると、せっかく効率的にタスクを作っても目標達成ができなくなってしまいます。
むしろ、一旦お断りして、
「恐れ入りますが、この日程ではいかがでしょうか?」とか、
「他の予定を先延ばしして、何とか合わせることができました」と言う方がいいのです。
相手は「自分のために予定を開けてくれた」「きちんと対応しなければならない」と考えるのです。これも「返報性の原理」です。
また、逆に毎回何でも顧客の言うとおりにしていると、いいように使われてしまう可能性が考えられます。
多少なりとも、「この方を動かすにはコスト(手間)が発生する」と思わせたほうが後々有利に働くのです。
コストが発生するものには前向きに対応しようとか、こちらの無理を聞いてくれたのだから、多少の条件は聞いてあげようなどと考えるようになるのです。
逆に、「この営業マンなら無理を言っても聞いてくれる」と思われてしまうと、無理な価格交渉や急な仕様変更、契約後の無理難題などを押し付けられるような関係性になってしまいます。
これは、いつも顧客の都合にストレートに答えすぎるが故に生まれた悲劇です。まさにこれこそ「御用聞き」ですね。
共感を作り出す
さらに、人には自分と近しいものに共感を抱く傾向があります。
例えば、出身地が同じや世代が同じ、住んでいる都市が同じ、趣味嗜好が近いなどです。
何度もお会いして自己開示することで、この「類似性の法則」がうまく働き、共感していただける可能性があります。
また、自社に近しい導入事例があると、同様にこの法則が働いて自己開示が進むこともあります。
私が店頭に立っていたときに心がけていたいたことは、短い時間でいかに顧客が私と近しい状態を作り出すかでした。
知識やテクニックというのはその前提があってこそ、何倍にも役に立つのです。
顧客が自らのあるべき姿を想起できるシチュエーションを作り出すことが、白地を仕掛りへとシフトさせるうえで重要なことです。
営業ネタの作り方
有効なネタは椅子に座って考えていても思い浮かびません。
まず、手っ取り早いのは人と会うことです。今なら積極的にWEB商談をして、ざっくばらんに会話するのもいいかもしれません。
私は昔から積極的に展示会へ出かけたり、興味のある製品があると積極的にメーカーへ商談を申し込んだりしています。
理由は今の自分が持っていない世界観を得たいからです。
リテールビジネスにたずさわっていた頃から、情報を得るためによく商業施設やテーマパークなどへ出かけました。
自社のビジネスと関係のないところにネタがないと思っているならば、それは大きな間違いです。
人間は他者とふれあい、情報をもらったり与えたりすることでどんどんアップデートしていきます。
どの経験がその先の利益に繋がるのかなど、誰も先のことは分からないのです。
だからこそ、まずは行動あるのみです。
ネタは顧客のところに転がっている
それともう一つ、「ネタがないから顧客先へ訪問できない」と考えるのではなく、「訪問するからネタが生まれる」と考えることが大切です。
実際に、顔を見せたことで「そういえば、あれって御社で扱ってましたっけ?」といった質問が飛び出し、そこから受注へ繋がったことも多々あります。
そもそも、顧客からアポイントが無い限り、話すネタが無いのは顧客の方も同じです。
むしろ、営業マンが訪問し会話することで、日頃から頭の片隅に眠っていたネタが導き出されるのです。
仕様書やスペックは記憶に残らない
顧客へカタログや資料を渡しても、それだけでは記憶に残りません。
大切なことは感覚や経験を付随させることです。
たとえば、「資料がメールで送られてきた」というよりは、
「◯◯さんが暑い日に汗だくで持ってこられた」の方が遥かに印象に残りやすい。
私は顧客へ資料やカタログを渡す際に、よくそれにまつわるエピソードやジョークをセットにします。
例えば、「この商品は実は◯◯様でこのような使われ方をしたんです」や「私としてはこの商品より◯◯の方が趣味と実益を兼ねているのですが、今回は涙を飲んでこちらを紹介します」など、少し斜め上から行きます。
こういったことが、「御用聞きでもいいから何度も顧客と会いなさい」、
「メールではなくて直接手渡しなさい」と言う根拠です。
会議、日報、管理書類を減らす
まさに、これまでに話してきたことがそのヒントです。
白地を作り出すために圧倒的に行動量を増やせば、自然とそういった管理手法は減っていきます。
どの会社もペーパーレスへの取り組みは積極的ですが、そもそもその元となる「会議」「日報」「管理書類」の削減には消極的です。
手に取れる紙とは違い、こういった目に見えないコストこそ、実は大きな負荷となっているのです。
時間は有限ですから、そもそもの目的を阻害するものは削減すべきなのです。
会議の効率化については、この記事が参考になるかと思います。
マネージャーが集中すべきこと
「効率化する」「やりきる」「信頼する」
私はマネージャーにはこの3つの考え方が重要だと考えています。
過去の実績が必要となるのは上司へ報告するためであり、そのために会議や書類作成に時間を割くのはもったいないと思います。
議論に時間を割くべきことはこれからどうするかという未来のこと、この先のコミットであるべきです。
真の目的である顧客へ目を向けるために、ツールを極力一つのルーティンで使いこなせるように統一し、適宜、情報を共有できる環境を作り上げれば、過去の報告のために時間やコストを掛ける必要はありません。
会議を開催したり管理資料を作り上げることでマネージャーは仕事をやった気になるのですが、SFA や CRM に事実を残して結果を分析する方が、遥かに効果的です。
会議よりもリアルタイムコミュニケーションを心がけることが、白地を多く作り出すためには有効です。
日報の目的
営業のルーティンワークとして、日報を義務化している企業は多いかと思います。
日報は本当に必要でしょうか?
私の答えは、「KPI 達成のためのモチベーション維持に使う」なら、日報があっても良いです。
そもそも、日報は書くために時間を掛けるものではありません。
入力項目は定量的になっていて、ひと目見れば記憶に残るものであり、集計できるものが適切であると考えています。
なぜなら、本来日報は目標に対するプロセスが現在どの辺りに位置しているのかを分析する材料だからです。
つまり、あるべき姿ー現状=乖離を導き出すツールである必要があるのです。
今日一日何をしたかを書くのはまさに日記であり、日報ではありません。
その日一日で目標が達成できることはありませんから、一週間、一ヶ月、もしくは四半期が終わるまで営業マンは常に自分の目標と向き合わなければなりません。
だからこそ、日次で分かりやすい行動目標を定量的に実施します。
目標から逆算して、それをやるために必要な行動量や、チームで決めたKPIの進捗を共有してもらいます。
また、明日の目標を入力したり、目標に届いていない場合にはリカバリー策を選択肢から選んでもらうといった書式が使いやすいと思います。フリーコメントはそれを要約するための1〜2行程度が適切です。
これらを蓄積して集計することを考えると、SFA や CRM のようなツールにカウントさせるのがベストではないかと思います。
つまり、すべての仕組みを、個々が目標を達成するために協力関係が築きやすいものにしていくという考え方が大切です。
人間は忘れてしまう生き物
記憶力は人それぞれですが「忘却曲線」によれば、人が物事を忘れ、再び思い出すタイミングには一定の法則があるようです。
忘却曲線とは、人が時間の経過と共に一度物事を忘れ、再び思い出す際にどの程度効率的に思い出せるかをグラフで表したもので、ドイツの心理学者「ヘルマン・エビングハウス」によって提唱されました。
人はさほど興味がない話をされたところで、そう長くは覚えていません。
ただでさえお客様は、自分が集中すべき事柄で常に頭が一杯です。あなたのことなど、さほど興味はないのです。
しかし、忘却曲線のグラフによれば、また再びそのことを思い出そうとすることで効率的に学習できるということが分かります。
つまり、繰り返し思い出そうとすることで、記憶に残しやすくできるということです。
たとえば、10分間で聞いた内容を20分後に再度思い出そうとすれば、約4分で思い出すことができます(58%の節約)。1時間後であれば、約6分で思い出せる(44%の節約)。
これを利用して私がよくやるのは、商談の冒頭で大切なことを話し、それを終盤でも繰り返し話します。おおよそ20〜30分が経過していますから、60%ぐらい効率的に想起できるはずです。
また、帰ったその日のうちに商談録を簡潔にまとめたものをメールでお送りします。そしてそのメールをできるだけ読んでもらうために、自分が発言したことだけでなく、顧客が発言した内容も書き添えます。一方的な文章ではなく、内容に自分事があると興味を持つからです。
そうすることで、顧客が既に忘れてしまった記憶を再度思い出し、効率的に記憶に刻んでいただくように仕向けるのです。追記で顧客が次にアクションを取らなければならないこと「ToDo」を含めるとさらに効果的だと思います。
もしも、1ヶ月間一度も思い出すタイミングがないと、次のにその内容が頭に飛び込んできたところで、反復学習の効果は20%程度しかありません。つまり、ほとんど最初から語らなければ思い出せなくなってしまうわけです。
「あのお客様には1ヶ月前に会っているから、まだ会うのは早い」と考えているのなら、大きな間違いであることが分かります。人は何度も同じことを言われることでさらに記憶を濃いものにしていき、自分事に変換していくのです。
また、一日の終りにまとめて書く日報は記憶を詳細に残しているとは限りませんし、時間が経過していれば反復学習効果も薄れています。それよりも、20分〜1時間後に再度思い出しながら記録していく CRM のルーティンを作る方が有効であると言えます。
チェックは人を萎縮させ、アクションは希望を与える
PDCA の「C」はチェックです。PDCA を回す上では重要な要素です。
しかし、会議やコミュニケーションで常にチェックばかりしていると、やがて部下は萎縮してしまいます。
常に自分の結果に自信がある人はいいですが、そんな人ばかりではありません。顔を突き合わせて話すなら、未来のことを中心に話すべきです。
だから「C」ではなく、「A」アクションなのです。
営業会議では、あるべき姿ー現状=乖離に関して、「いつまでに」「誰が」「何を」「どんな方法で」「どの程度」「どうするか」を完結に議論しましょう。
そして、こちらから指示を出すのではなく、自ら意見を出してもらうことが大切です。事前にテーマを出して考えてきてもらうのがベストでしょう。
意見を出した後、マネージャーは「自分ならこう考える」「こうすべきだ」などと言ってはいけません。
そう言われた部下は、「マネージャーの言うとおりです」「マネージャーがそう思うならそれでいいです」となってしまうからです。
これでは仕事をやらされているだけで、何の主体性も生まれません。
営業において、答えはお客様のみが知り得ることであり、誰も正解など分からないのです。
ただし、予材が目標値に届きそうにないのなら、そこははっきりと叱って改善案をコミットさせなければなりません。
できない理由はたいていその人の心の中にあります。
ですから、人が悪いのではなく、考え方が悪いのです。
本人が自ら考え方を改め、目標へ向かって行動量を増やす支援をしてあげることで、営業は必ず成長し、白地(しらじ)が増えていくはずです。
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