【マーケティングの基本を解説!】今こそスタートすべき基本戦略の立て方

マーケティングの基本

様々な地政学リスクにより、物価の高騰や増税が消費者心理を直撃しています。そのような状況下ではすべての消費者が積極的に購買行動に走るとは思えず、経済の先行きに暗雲が立ち込めているといっても過言ではありません。

すべてを環境の責任にしてしまえば心は楽ですが、それでは何の解決にも繋がりません。
そこで今回は、買っていただけない時代にこそ真剣に取り組むべきマーケティング戦略に関する基本的な考え方について記事を書きます。

まずは基本的な考え方から

まずは基本的な考え方から

まず最初に、「良いものを作っていれば必ず売れる」という考え方を捨てましょう。
「オリジナリティを出せば売れる」という考え方も、よほど敵がいないジャンルでなければ実現できないというのが現状と捉えてください。

つまり、現代は「商品を顧客に売る」という時代から、「商品を顧客に買っていただく」という時代に変化したと考えるべきです。

別の角度から見れば、「消費者はモノを買わなければならない理由を求めている」とも言えるでしょう。

インターネットもテレビも無い状況で、情報を遮断した暮らしをしていない限り、私たちの日常には大変多くの情報が溢れています。

「情報が多すぎて処理しきれない」だからこそ、人々は自分にとってインパクトがない情報は流し読みで通るようになっているのが現在の状況です。

普段からネット検索やSNSを駆使しており、情報リテラシーが高い方であればあるほど、自身の興味が深い分野かインパクトのある情報にしか興味を持ちません。

マーケティングの基本「4P」

では、狙った消費者に興味を持ってもらうためには、商品のどこにこだわればいいと思いますか?
主に、消費者が商品を選ぶ基準となるのが「価格」、「品質」、「デザイン」、「イメージ」、「感覚」、「ブランド」などです。

それらの要素を整理して考えるために使用するマーケティングの基本フレームワークを「4P」と言います。
米国のマーケティング学者であるエドモンド・ジェローム・マッカーシー(Edmund Jerome McCarthy)が「4P」という概念を提唱しました。

4Pのイメージ

4Pとは、製品(Products)、価格(Price)、伝達手法(Promotion)、流通手法(Place)の4つの要素の整合性を取ることを行います。

まずは4Pをちゃんと議論し、自社商品のどこが強みで、どこに弱み(課題)があるのかを分析し、商品戦略を企てていくことがマーケティングの基本です。

買い手から見たマーケティング戦略「4C」

この「4P」はあくまでも売り手側から見た戦略です。
一方、買い手側(消費者側)から見た商品の戦略を「4C」と言います。

4Cと4Pの関係性
4Cと4Pの関係性

4Cとは、顧客にとっての価値(Customer value)、顧客にとってのコスト(Cost)、顧客とのコミュニケーション(Communication)、顧客の利便性(Convenience)の4つの要素の整合性を取ることを言います。

これを売り手の「4P」と対比するとこの図のようになります。

つまり、売り手にとっての製品(Products)とは、買い手側にとってみれば価値(Customer value)を満たすものでなくてはならないという考え方になります。

同様に、売り手にとっての価格(Price)とは、買い手にとってのコスト(Cost)と直結し、売り手にとっての伝達手法(Promotion)とは、買い手にとってのコミュニケーション(Communication)手段となり、売り手にとっての流通手法(Place)とは、買い手にとっての利便性(Convenience)と直結するわけです。

サービス業向けにのマーケティングとして、この辺のことをさらに深堀りして書いています。

店舗での購買プロセス分析について書いたパイプライン分析の記事です。

市場における優位性を分析する「3C分析」

3C分析のイメージ
3C分析のイメージ

現在、自社が置かれている状況を分析する代表的な手法に、「3C分析」があります。

3C分析は顧客「Customer」、競合「Competitor」、自社「Company」という3つを軸にして、自社の立ち位置や強み・弱みを把握するためのフレームワークです。

顧客(Customer)の分析

ここでは消費者のニーズ、購買行動、消費人口、購買プロセスなどを分析します。自社が置かれた市場を「マクロ環境」「ミクロ環境」の両方から分析することで、顧客(市場)から見た自社の姿を可視化することができます。

マクロ環境の分析を行うことで、景気変動や法律改正、人口推移、トレンドの流動などの社会的な変化を見つけ出すことができます。分析にはPEST分析という手法がよく用いられます。

また、ミクロ環境を分析する際は、「5フォース分析」という手法がよく用いられます。
5フォース分析とは、マイケル・ポーターが提唱した業界の構造変化を読み解き、自社ビジネスへの影響を分析する手法です。

PEST分析

  1. Politics:政治的要因・・・法改正、政権交代、デモなど
  2. Economy:経済的要因・・・物価、消費動向、経済成長率、株と為替の動きなど
  3. Society:社会的要因・・・人口構成、少子高齢か、世論など
  4. Technology:技術的要因・・・インフラ、イノベーション、IT、新技術など

5フォース分析

  1. 新規参入企業:市場の規模、参入者の技術レベルやブランド力
  2. 代替品の脅威:自社の製品・サービスに代わる価値を持つもの
  3. 競争関係:競合他社との直接的な競争
  4. 売り手の交渉力:売り手(サプライヤー)と自社との力関係
  5. 買い手の交渉力:消費者や顧客といった買い手と自社との力関係

競合(Competitor)の分析

競合分析は、市場ニーズに対し競合他社がどのような戦略をとっているのかを分析します。
分析するに当たって、事前に調査会社を使ったり関係者からヒアリングするなどして、次のようなことを調査しておきます。

  1. 競合他社が取り扱う商品やサービスの特徴
  2. 競合他社の顧客ターゲットと、その顧客が感じている付加価値
  3. 公開されている業績や販路、販売戦略など
  4. 競合他社が持つリソースとその生産性
  5. 業界内でのシェアや影響力
  6. 競合他社のビジネス・開発動向など

これらのデータ以外にも競合他社のWEBサイトを分析すれば、マーケティング戦略やSNS戦略、コンテンツ戦略、顧客への導入事例などを調査することができます。

競合のWEBサイトのアクセス状況などを分析ができるツールもありますので、こういったツールを活用するのもいいかもしれません。

自社(Company)の分析

競合分析を行うことで、ある程度自社の分析もできてきたかと思います。その結果から、多面的に自社の強み・弱みを分析していきます。

自社をある程度客観的に分析する手法として、「SWOT分析」というのがあります。
SWOT(スウォット)分析は、企業や事業の現状分析を実施し、会社が掲げる目標に対して自社がどのような戦略を打つことができるのかを検討していくための手法です。

SWOT分析のイメージ
SWOT分析のイメージ


SWOT分析は、次の4つの観点から評価を実施します。

  1. Strengths:自社のもつ強み
  2. Weaknesses:自社のもつ弱み
  3. Opportunities:機会
  4. Threats:脅威

マーケティングを実施するにあたり、これらの3C分析から、まずは自社の置かれた状況をできるだけ客観的に、且つリアルタイムに知っておくことが重要です。

買い手のニーズを洞察する

商品戦略を立てる際に、よく「顧客ニーズ」という言葉が飛び交います。
「ニーズ」とは、私たちが日常の中で感じる不満から生じる課題を、理想の状態にしたいと考えたときに生まれる欲求のことを言います。

ニーズは顕在化したものだけでなく、深層にある欲求(潜在的欲求)の場合が多く、他者が的確なニーズを察知することは難しいと言えますし、本人に聞いてもふんわりとしていることが多いです。

まずは身近な人のニーズを考えてみる

奥様はキッチンがどう不便なのか?
奥様はキッチンがどう不便なのか?

たとえば、奥様が「うちのキッチンが何となく不便なのよね」とおっしゃった際に、旦那様は奥様に何を提案したらいいと思われますか?

奥様のニーズが顕在化していれば、容易に答えを見つけることができるかもしれません。
しかし、ここでは奥様も「何となく」と言っていますから、あまりクリアに想定できているわけではないのです。

では、まず奥様が「キッチンが何となく不便」と感じたきっかけを考えてみましょう。

  1. キッチンが狭く、調理工程が滞ることがある。
  2. ガスコンロの数が足りないため、鍋とフライパンが同時に使えないから。
  3. 収納の数が足りず、キッチンツールが片付かないから。

次にこの仮説を持って、奥様にインタビューを行います。

人の潜在意識は簡単には分からない
人の潜在ニーズは簡単には分からない

この中に奥様が感じていた「何となく不便」に該当する理由があれば、棚やガスコンロのリニューアルでめでたく解決ということになります。

しかし、残念ながら、人の心理というのはそう簡単なものではありません。

試行錯誤のあげく、奥様からある提案がありました。

「そうそう、昨日SNSで見かけたキッチンのデザインがものすごく可愛かったの。こういうセンス憧れるよね」

そういってスマートフォンでキッチンの写真を見せられました。

はい、お分かりかと思います。
実は奥様はキッチンに不便を感じていたのではなく、SNSで見かけた可愛いデザインに好奇心が刺激されていたのでした。

つまり、「何となく不便」は真の欲求ではなく、「あんな風に可愛くしたい」が真の欲求であったわけです。「何となく」という表現は、このようにふんわりとしたイメージと紐づいていることが多いのです。

この場合、棚やガスコンロの買い足しは必要なく、恐らく100均アイテムや壁紙、キッチンの配置変更などで奥様のニーズが満たせるかもしれません。

ニーズとウォンツの関係性

消費者がニーズを持つということもこれと同様です。
大抵の場合、他者はもちろんのこと、本人も自分の持つニーズが何であるのかをクリアにできていません。

このように、消費者が持つ潜在ニーズから最終的に生まれてくる解決手段のことを「ウォンツ」と言います。

ニーズとウォンツの関係性
ニーズとウォンツの関係性

この例の場合、奥様のニーズは「何となく不便」ではなく、「あんな風に可愛くしたい」だったわけです。

だから一つのウォンツとして、「壁紙や配置変更で雰囲気を変える」といった選択肢が生まれるわけです。

つまり、ニーズとは「不満を補う目的」であり、ウォンツとは「不満を補う手段」ということになります。

より的確なウォンツを導き出すには?

この奥様のような、「○○に困っている」という顕在的なニーズを元に、どのようにすれば潜在ニーズを引き出し、より的確なウォンツへ導くことができるでしょうか?

ゴールデンサークル理論
ゴールデンサークル理論

そのヒントとなるのが、米国の作家サイモン・オリバー・シネックが提唱した「ゴールデンサークル理論」です。

ほとんどの人は行動を起こすとき、一番外側にある「WHAT(何をするのか?)」「HOW(どのようにするのか?)」を起点に物事を考えがちです。

しかし、より自らの深層欲求を満たすためには、サークルの中核にある「WHY(なぜそうするのか?)」を起点にすべきという考え方です。

WHYを起点とすることは自己実現に役立つだけではなく、消費者へより一貫したコンセプトでサービス提供を続けることにも大いに貢献します。

では、これを上記の例に当てはめてみましょう。
まず、「WHAT」「キッチンが何となく不便」ということです。図の①がその状況です。
この「何となく」を具体化するために、図②のように「なぜ?なぜ?なぜ?」と3〜4回繰り返すと、相手はより中核の「WHY」(潜在ニーズ)にたどり着きやすくなります。

潜在ニーズにたどり着いた後は、図③のようにニーズから外側へ向かって、「そのためにどうやる?」「そのために何を使う?」といった順に真のウォンツを導き出していきます。

図①
図①
図②
図②
図③
図③

具体的には…

  1. キッチンが不便だと思うのはなぜかな?
    – 片づけても何か雑多に見えるの
  2. キッチンが雑多に見えるのはなぜかな?
    – 何か、全体的にまとまりがないの
  3. まとまりなく見えるのはなぜかな?
    – 実はね、こんな可愛い感じが理想的だと思うの(SNSの写真を見せる)
  4. これを見かけたから、今のキッチンに不満を感じたのでは?
    – 確かに!そうかもしれない…

という具合に、数回「なぜ?なぜ?なぜ?」と繰り返すことで、表層化されていなかった潜在ニーズに気がつくことがあります。

後は図③のように逆順でウォンツを探していけばいいわけです。

ゴールデンサークル理論は人を動かすコツ

ゴールデンサークル理論は単にビジネスのフレームワークのように考えられたのではなく、脳科学的根拠に基づいています。

(参考)脳内のイメージ
(参考)脳内のイメージ

人間の脳はその役割によって分かれており、大脳新皮質と呼ばれる部分が合理的な思考と言語を司る部分です。ここがゴールデンサークルの「WHAT」に対応しています。

一方、大脳辺縁系は感情・本能などを司る部分で、言語には関与していません。

つまり、ここが潜在的なニーズである「WHY」に関与していることが分かります。
顧客ニーズを洞察するコツは、顧客にこの大脳辺縁系を動かしてもらうことです。

どんな商品を認知して欲しいのかによってアプローチの方法は異なりますから、あくまでもヒントと捉えてください。
顧客にどんな体験を、どんなタイミングで提供すればいいのか、そこを深く掘り下げることこそが、マーケティングの基本と言えます。

こちらの記事は、ゴールデンサークル理論が人を動かすことにも効果的であることを書いています。

ニーズもウォンツもいずれも顕在化されていない消費者に認知してもらう手法について書いた記事です。

誰にどんな価値を提供するのか?

もうひとつの基本的なマーケティングの考え方として、「STP分析」があります。
STP分析とは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つを分析する方法で、 マーケティング理論で知られるフィリップ・コトラーが提唱したフレームワークです。

自社の商品を誰に向けてアプローチするのか、もしくは誰が自社の商品を選んでくれる顧客なのかを分析するための大変重要なマーケティング手法です。

STP分析のイメージ
STP分析のイメージ

まず、市場を特定の軸で細分化します(セグメンテーション)。次に自社が狙うべき顧客を特定します(ターゲティング)。

最終的には、自社が現在置かれている立ち位置の確認(ポジショニング)することで、どのような戦略が自社に合っているかを特定し、戦略の方向性を絞り込んでいきます。

この「STP分析」によってターゲットを具体化し、実行戦略に落とし込むことを「マーケティングミックス」と言います。これが最初に話した「4P」です。

マーケティングミックスのイメージ
マーケティングミックスのイメージ

自社の市場機会を探る所からスタートし、縦軸に沿ってSTP分析を実施します。

その後、横軸の4P戦略とマーケティングミックスすることで、市場の特定からそこに対して投入する商品に至るまで、具体的な一貫した戦略立案が完成します。

このような基本的なフレームワークを実施することによって、組織の中に散らばった情報を整理し、組織全体が同じ方向に向かって舵を切れるようにしていくことがマーケティングという仕事です。

まずは基本戦略を固めて、手段としてWEBマーケティングや営業手法のデジタル化(デジタルマーケティング)を実施していくことが組織のDXを推進していくことに繋がっていきます。

当サイトの中でも常に上位アクセスとなっているSTP分析からマーケティング戦略まで、さらに深堀りした記事です。

当社では顧客接点の拡大からWEB販促の代行、ご担当者の育成、CRMやMA等のツール導入まで、一貫したマーケティングコンサルティングを提供しております。

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▼略歴

  • 東京都世田谷区生まれ
  • 学生時代には経営・財務の分野を学び、建設・不動産業界で経理部に在席。
  • 家電メーカーにて直営店舗の運営、マーチャンダイザーを経験。PCのBTOビジネス推進やホームネットワークの普及推進、デジタル家電活用のセミナー講師、直営の免税店を経験。
    同時に、グループ企業のWEBマスターとして、ポータルサイト、eコマースサイトの制作・運営、情報セキュリティマネジメント、ナレッジマネジメントを推進。
  • 家電量販店にて情報部門リーダー、都心店舗の店長を経験。
    その後、店舗開発部で新店舗出店時のレイアウト設計やスタッフの育成、出店準備、VMDの企画・制作などを歴任。
  • システムインテグレーターとして、手術室及び血管造影室の画像・映像配信システムの開発・設計、エンジニアリングを担当。さらに、遠隔手術支援システムの企画・開発を担当し、専門誌へ医師の偏在問題に関する論文を寄稿。
    また、医療向けシステムやフェリーの設備を安全にリモートメンテナンスするソリューションを開発・運用。
    その後、会社のリブランディングプロジェクトへの参画、デジタルマーケティング組織の立ち上げ、メディカル組織のマネジメントを経験。
  • 論文 医師偏在の課題と向き合う遠隔手術支援ソリューション(CiNiiで検索
  • 論文 手術室の生産性向上に貢献する医療映像ソリューション(CiNiiで検索
  • 現在、企業向けにIT技術者育成セミナー(ネットワーク/ウェブデザイン等)を主催しております。