開業した当時は調子が良かったのに、しばらくするとお客様が来ないと嘆く声をよく耳にします。こういったことは大抵の場合、サービスに満足していないことが原因と言われていますが、営業本人にはそのような自覚などありません。
今回はそんな「ざっくり感」を払拭しようと、私が過去に店舗経営で実施していた分析・検証方法について記事を書きました。
この記事のインデックス
購買までの流れはどのビジネスでも同じ
絶対に他社には真似できないビジネスを展開すれば、顧客が戻ってこないということはありません。
しかし、そのようなビジネスを生み出せるのは稀なことですし、たとえ独自性の高いビジネスで成功したとしても、市場が活性化すれば他の企業がどんどん参入し、市場は泥沼化してしまいます。
自社が行うビジネスを差別化することは重要ですが、どういった差別化が適切なのかを知るためには、ある程度の根拠が必要です。ですから、まず最初にその根拠をちゃんと「貯める」手立てを実行しました。
購入までのフローを想像してみる
まず、いつものように頭を整理するために、日常の当たり前のことを図式化します。私は子供の頃から物事を深く考えるときには、必ずこの事象を抽象化してシンプルにする→頭の中の情報をカテゴライズして整理する→再度ズームインして細かく分析するといったことを繰り返し行っています。
ここでは皆さんが想像しやすいように、スタッフ10名程度の家電専門店をサンプリングしていきます。
家電専門店にした理由は、実際に以前私が店長として家電専門店を経営していたからです。
自分が小売店を運営していたとすると、シンプルにこのようなフローができると思います。
フローからフローへ移動する間には コンバージョン(CV)というパイプラインが敷かれています。
このように、顧客への接触からクロージング、購入までの一貫した流れをパイプラインに例えて分析する手法を「パイプライン分析」と言います。
店主である皆さんはこの各地点でのCVを達成するために、知恵を絞って活動されることになるかと思います。
まず、集客するためには広報活動が必要です。お店なら店頭での呼び込みや新聞折込チラシ、ネット広告などがあるかと思います。
パイプラインの流れ
CV①
来店広告の結果により、お客様が来店されます。来店したお客様は最初は店内を見回すことでしょう。「自分の欲しい商品はどこにあるのか?」あるいは、「自分の目的や部屋に合う良い家電はないか?」と探し回ります。
CV②
接客ここでお声がけするタイミングが合えば、スタッフさんとお客様との間で会話が始まります。もしくは気になる商品が見つかれば、お客様の方からお声がけいただけるかもしれません。
CV③
商談接客の効果で商品の機能やデザイン、用途がお客様の嗜好・ニーズに合うと気が付けば、お客様は次に商品の検討に入られます。
CV④
購入結果ご予算が合って、他の入手方法と比較してもここのスタッフや店舗から購入するのが「自分にとって最適」と考えることができれば、その場で購入に至ります。
CV⑤
集客商品や店舗を気に入って頂いた後に他のアイテムや周辺機器を探しに再来店されたり、次はご家族やご友人と来店されたりするかもしれませんし、ご満足されて他のお客様を紹介してくれるかもしれません。
ざっくりですが、ここまでで5段階のCVがあるわけです。
そのどの段階のCVが失敗に終わっても、お客様は購買・再来店に至りません。短い時間の中で、店舗のスタッフさんはこんなにたくさんの段階を経ているわけです。
BtoCでもBtoBでも根っこは同じ
今回は家電専門店をサンプリングしましたが、実はこれ、店舗に限ったことではありません。
たとえば、これがBtoBの商談であったとしても、集客や商談のきっかけ、商品の比較検討、商談の結果でご購入、紹介や再購入など、ほぼ同じだけの段階を経ているといえます。
各CVを目標にして PDCA を回すとダメな所が見えてくる
以下は、私が小さな家電専門店の店長をしている頃に作った「顧客増大のワークフロー」です。
顧客増大のワークフロー
- 来店者数=集客目標 ✕ CV①
- 接客数=来店者数 ✕ CV②
- 商談数=接客数 ✕ CV③
- 購入数=商談数 ✕ CV④
- 売上=購入数 ✕ 単価
- リピート数=購入数 ✕ CV⑤
結果、2回目のサイクル以降、新規客に加えてリピーターが増えていくわけです。通常、新規客は急に増えることはありませんから、真にフォーカスすべき戦略はこのサイクルの中にあると言えるのです。

このワークフローの結果を元にスタッフミーティングを実施します。
まず「販促の結果がどうだったか?」、次に「来店した顧客とどのくらい会話ができたか?」、「接客した顧客とどのくらい商談ができたか?」、「商談した顧客がどのくらい買ってくれたか?」、そして最後に「買ってくれた顧客がどれくらいリピートしてくれたか?」。
これらのCVに各自目標を設定し、チェック表の記入やポイントカードの履歴を使って、スタッフ全員と売上計画を立て、繰り返し振り返りを行っていました(PDCA)。
この各CVを何%に高めるかということが次回の目標値となり、確率の低いCVを深堀りすれば、店舗の課題が見えてきます。その課題を解決するための話し合いこそが、真の毎月の目標となるのです。
営業スタッフは皆人間ですから、各地点においては得手不得手もあります。それなら、各地点においてコンバージョンの高いスタッフの事例を聞いて学習すればいいわけです。
ただ売上が悪いと嘆いているよりも、ずっと建設的だと思いませんか?

ただ、売上目標を立てて、前年はこうだったから今年は…とかやるのはチェーン店であれば本部のやることで、店舗の現場ではより身近なオペレーションについてミクロな視点で考えることが大切です。
どんなに組織が大きくなろうとも、結局相手も自分も血の通った人間だからです。ロボットやコンピューターではありませんから、皆同じということはないのです。
買っていただいたお客様が再来店してくれれば顧客増大のサイクルができあがり、これによって販促にばかり頼らなくとも、たくさんのお客様にご来店いただけるお店を作ることができました。
日本はものづくりの国ですから、生産の現場での品質管理は世界的に見てもとても緻密に行われています。しかし、営業活動に関しては割とザルだったりするわけです。

これ以外にも粗利を確保するためにソフト工料(いわゆる工事・サポート料金)の獲得に工夫を凝らしたり、顧客単価を上げるためにセット商品を積極的に作ったりしました。
また、敵をよく理解するために、商圏内の競合店へ価格・在庫・展示・接客の調査へ行ったりして、競争が激しい業界を生き残ってきました。
店舗の経営は「一律こういうもの」という正解があるようで、実際にはそんなものはありません。だからこそ、人の経験やそこから培われた能力が生きてくるのです。

最近では接客などAIやロボットにやらせればいいと考える風潮もありますが、AI やロボットに必要なことは成功プロセスのデータを貯めて、それを ディープラーニング させることです。
成功のプロセスは業種によって、ビジネス形態によってすべて異なるものです。
それならそもそも、自社の成功プロセスがデータ化されていなければ AI やロボットを使うことも叶いません。
顧客の表情は肌感覚では見えない
よく、営業担当者がお客様のことを一番よく分かっていると言う方が多いですが、第三者から見れば、これはあくまでも肌感覚です。
「真のお客様の姿」つまり、表情まで読み解くためには、日々お客様とコンタクトを取っている方々とのやり取りを明確にしていく必要性があります。
BtoCなら一人の顧客の言動が大切ですが、特に相手が企業のような組織の場合、一人の意思決定では購買まで至りません。個人客であっても、実はご家族が別の販売員の接客を受けていて、それが購買の意思決定に深く関わるといったケースはよくあることなんです。
ですから、顧客とのあらゆるコンタクト履歴(私たちはタッチ履歴と呼びます)をデータ化することが勝ち筋を分析するための重要な材料となるのです。
また、前述のように、根本的に売上を増やすためには顧客数を増やすか、顧客単価を上げるしかありません。顧客数を増やすのも顧客単価を上げるのも、結局最後は現場が何に向かってどう行動しているかが鍵となるのです。
以下はデータ活用の流れを図式化しました。

データにはいつ、どこで、誰が、何を、何のためにどのようにしたか。その結果、何が起こったかを貯めていきます。データは貯めるだけではダメで、それを他の方の知恵と融合し、仮説を立てて最適化していくことが求められます。
逆に意味の無いデータの蓄積は現場が疲弊するだけでなく、今後は個人情報保護などの観点からも極力避けた方が良いと考えられます。
これを繰り返すことで、やがて大切なお客様の表情がくっきりと見えてくるはずです。もちろん、数字の流れも重要ですから、ここに売上数・売上金額等の数値もあればベストです。
日本のデジタル化は遅れている
しかし、日本では、まだまだこのデータ活用が進んでいないのが現状です。
総務省が2020年3月に公表した「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負 報告書」によれば、顧客データを活用している企業は大企業で42%程度で、中小企業では26%程度とのことです。
そして、いわゆる、DX(データに基づく経営)の調査結果では、データ分析に基づいた経営判断の実施は増加傾向にあるとはいえ、直近3年以内で22.6%の企業しか実施していないことが分かります。

これが現在の日本企業の実態であるということであり、さらにこれは、まだまだデータを使った経営でライバル企業に勝る余地が残されているという証明でもあります。ぜひ、データを使ったPDCA戦略を根幹に置いて欲しいものです。
DX化(デジタルトランスフォーメーション)については、ぜひこちらの記事も参考にしてください。
業務のデジタル化にはヒューマン的な垣根があります。こちらはその対策について書いた記事です。
顧客が企業を選ぶのはサイコロを振るのと同じ
結局、顧客が企業を選ぶ基準とは、サイコロを振るのと同じです。

たとえば、お肉が食べたいと思ったとき、何の肉料理にするか、どのお店にするか、それとも肉ではなくラーメンにするかなど、消費者は常にサイコロを振って意思決定しています。
その意思決定に自社を選んで欲しければ、確率的に自社の目が出る数を増やすしかないのです。
つまり、顧客に選んでいただくためには、自分勝手な価値観の押しつけではなく、顧客が何かを思い浮かべた時に連想されるキオクに、高確率で登場しなければならないのです。
ライバルは「自分と似通った人たちだけ」と考えるのは自分勝手な想像であり、相手にとっての選択肢はその目的に合わせて多岐に渡ります。
有名な話では、「若者に自家用車が売れなくなったのは携帯電話に客を取られたため」というのがあります。
一見、全く別のものと感じられますが、若者が頑張って自家用車を購入し、毎月ローンやガソリン代などの諸経費をかけることは、実は同じお財布の中でやっていることだということを理解しなければなりません。

車をスマホや様々なセンサーなどと連携し、スマート化していくプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」は、技術的な革新だけでなく、こういったサイコロの戦略的にも重要なことなのです。
こういったことから、ターゲットの顧客がどんなことに興味があり、どんな生活をしており、どんな嗜好性を持っているのかをデータ化していくことが重要であることが分かると思います。
また、蓄積した履歴を共有するだけでなく、営業・案件進捗報告にアプリ画面をそのまま使用できるため、EXCELで報告書を複数作成するなどの工数を削減することができます。
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