※この記事のアイキャッチ画像は、DALL·Eで生成しました。
企業がある程度成長していくと、一人の営業担当者が年間に数千万円、数億円単位の売上目標を持って活動します。
また、予算規模の増大に比例して、その営業プロセスはどんどん複雑化していきます。
一方、経営層は営業案件の規模や会社のキャッシュフローを常にウォッチしておかなければなりません。
企業は一般的に、赤字になるだけでは倒産しませんが、現金が不足して不渡りを2回出してしまえば活動を継続することはできなくなってしまいます。
そのキャッシュフローを安定させるためには営業部門の収益を拡大し、いつ、どのくらいの仕入れと支払いが発生し、それに対してどのくらいの受注が獲得できて、それはいつ売上計上され、いつ入金されるのかなど、営業プロセス全体を把握しておく必要があります。
それ故、現場と経営層が蜜に情報を共有していくことが必要です。
この記事のインデックス
案件管理とは
「案件管理」とは、営業活動で発生する顧客との対話内容や要件、見積もり、受注、売上に至るまでの商談プロセスを可視化し、組織プロジェクトとして的確に達成していくためのマネジメントのことです。
そのためには、営業担当者一人ひとりが必要な情報登録を迅速且つ正確に行い、素早くチーム内でシェアしていくことが求められます。案件管理が自然なルーチンとして定着していけば、案件を属人化せず、組織として継続的に安定した営業活動が実現します。
しかし、従来の案件管理は、専用システムよりもExcelなどを使った案件管理シートやAccessなどのデータベースに依存する部分が多く、データ自体は基幹システムやサーバーに保管されていても、肝心なアウトプットは個々のOfficeツールに依存するような企業が少なくありません。
案件管理のゴールとは
では、案件管理のそもそものゴールとは何でしょう?
それは関わる方の部門や立場によっても異なります。
たとえば、品質管理部門の方であれば、ISO の基準に則った物件管理を実施することで翌年の審査をスムーズに通すためというのがありますし、営業マネージャーやリーダーであれば、会議で叩かれないように適切な案件管理を行い、自部門の業績を上げることでしょう。
また、経営者や事業責任者から見れば、年初に立案した事業計画の予算に対し各月の実績を達成し、次月、あるいは四半期、半期、通期の予想を立てて経営目標を達成していくことです。
しかし、その中で割と見逃されがちなことがあります。それは個々の案件分析を行い、次に活かす活動です。
たとえば、個々の案件の失注要因、勝因を分析することで今後の案件の確度を上げていきます。
ひとつの案件がクローズしたときにそこで終わりになってしまっては、PDCA は回りません。
営業プロセスの改善やサービス強化を達成していくためには、この振り返りが何よりも重要だと言えます。そして、案件プロセスのデータは営業担当が新たな案件に対応するときの参考情報になったり、新人や後進の育成資料としても活用することができます。
案件マネジメントで重要な受注確度管理
案件管理で必ず使う指標が「受注確度」です。
案件確度とは、その案件が現時点でどの程度の進捗であるかを個々の営業担当者が示すものです。
その指標は会社によって異なりますが、以前私が所属していた会社では確度をA〜Dで管理していました。
一般的に、進捗率(25%〜100%)といった指標を使う企業が多いかと思いますが、記号であれば後からその定義を変更することが容易であると考えて、A〜Dを使っていました。
例えば、当時使っていた指標の内容は、「A」は今月確実に受注へ至るもの、「B」は努力すれば今月受注確定するもの、「C」は今のところは見込みは低いが、顧客の都合で受注確定するかもしれないもの、「D」は予算取りや相見積などであり、完全に顧客都合であるものなどです。
受注確度は何も営業だけの指標ではありません。たとえばシステム会社や建設・設備関係の会社であれば、営業案件に設計や施工担当者も関わってきます。
受注確度が明確になれば、そういった部門の関係者もその案件にどの程度の手間をかけ、どの程度専門性の高いスタッフを充てるかなどのマネジメントを決定することができます。
加えて、失注した案件もちゃんと管理しておくことが大切です。なぜなら、失注は必ずしも自社の営業が悪いわけではなく、タイミングの問題やその時の競合によるところも大きいからです。
失注案件に関してちゃんと振り返りを行うことで、他の案件に関するウィークポイントも可視化されていきます。
さらに、失注した案件に関わる顧客はマーケティング部門へ渡し、メルマガやDMなどで継続的にフォローし、次に顧客ニーズが顕在化した際に、チャンスを逃すことなく再アプローチしていくといったマーケティング戦略を立てていきましょう。
確度の指標をどうされるかは企業側で決めればいいと思いますが、決してやってはいけないことは「C」は見込みが低いと決めているにも関わらず、「今期は数字が厳しいから必達だ」などのように管理者都合で変えてしまわないことです。
プロセス指標は営業個々のモチベーションと密接に関係してきます。
指標を変更する際には前提として、必ずきちんとした目標設定があるべきです。ここを抑えておかないと、社員の中に環境のせい、顧客のせい、経済のせい、会社のせいと他責で考える癖がついてしまいます。マネージャーに悪気がなくても、これが離職率の増加にも繋がるのです。
こういった「学習性無力感」を払拭し、営業担当者が最も気にかけるべき顧客との関係性に重点を置けるようにマネジメントを工夫しましょう。
エクセルを使った案件管理方法
案件管理には様々な管理項目が必要です。それらを列挙していくと、次のような項目になります。
▼管理項目
- プロジェクトNo.(物件No.)
- 物件名(現場名など)
- 担当部門(営業、設計、施工、支店・営業所など)
- 営業担当者
- 業務担当者(発注・請求など)
- 案件ルート(商流、付随する物件、発生のきっかけなど)
- 顧客名(E/U、元請けなど)
- 顧客担当部門
- 製品・サービス名
▼状況確認項目
- 受注確度(受注確率、記号など)
- 受注予定金額
- 受注予定月
- 売上予定月(検収予定月)
- 物件進捗状況(受注後の進捗)
- 保守サービス契約の有無
かなりざっくりとしていますが、最低でもこのぐらい多くの管理項目が必要であり、さらに PDCA のことを考慮すると
- 案件結果(受注、失注のカウント)
- 勝因又は敗因
- 競合の状況(どんな競合があり、それに対してどう戦ったか)
- 今後の課題
以上のような振り返りを実施しないと、次の物件の確度を上げることや後進を育成することに役立たせることはできません。
エクセル管理のウィークポイント
案件管理を最も容易に行う方法はExcelです。Excelならどの担当者も自身で臨機応変に内容を追加・修正していくことが可能です。今ではクラウドサービスにシートを保存して共同作業できるツールもありますから、手軽さから益々この方法がチョイスされていくことでしょう。
一方、Excelで営業担当者、マネージャー、業務担当、設計・施工担当などが共通のフォーマットで管理していくことは非常に困難です。
結果、誰かが営業担当者の情報を集めて案件リストを更新したり、報告用に別のフォーマットが作成されたりなど多くの手間がかかり、それぞれが別のフォーマットに情報を書き込んでいくために発生する「情報差異」が発生することになります。
情報差異とは、営業は知っているがそれを現場レベルに引き継いだ施工担当は知らないとか、現場担当は知っているが営業担当に顧客の追加要件がフィードバックされていないなどがよくある事例です。
その結果、現場の後戻りが起きたり、完了後に顧客クレームが発生したりと悪いことが重なります。
さらに営業担当者の人数が増えてくれば、物件運用は苦しくなるばかりです。
専用のクラウドシステムを使いこなす
そのようなときに役立つのが、クラウドにデータベースを持つシステムを活用することです。データベースがクラウドにあれば、個々が管理している内容を必要な人が必要な時に確認することができます。
顧客管理システム(CRM)を活用する
顧客管理システム(CRM)を使えばそれぞれの担当者に必要な項目のみを表示することもできますし、その方の立場で必要な画面をフィルタリングして表示することができます。
また、前述した振り返りを実施することも可能となり、導入後に年月が経過した物件の情報を確認する場合も、当時の見積もりや発注アイテムを確認したり、図面を見てリニューアルが必要な箇所を洗い出すなど、顧客との長期的な関係性を保つ行動を迅速に行うことができます。
営業担当者自身が以前の物件内容を振り返り、その際のノウハウを別の物件に活かすこともできますし、後進の育成や担当者に異動や離職が生じた場合の引き継ぎにも使用することができます。
営業支援システム(SFA)を使う
営業支援システム(SFA)は、営業現場での活動や営業プロセスのマネジメントを支援するシステムです。営業案件や営業担当者の行動を可視化する目的で導入する企業が多く見られます。
CRMが顧客とのコンタクト履歴を蓄積していくものであるのに対し、SFAは営業案件の引き合いから受注までのプロセスや納品するまでのプロセス、失注案件の管理などを行います。
営業案件のプロセスを定期的に管理していくことで、案件の進捗状況や受注確度を可視化できるのが特徴です。
重要なことは本来の業務を邪魔しないこと
よくある失敗が、自社の規模では使い切れないような高機能を持つシステムを導入したことで、スタートまでの準備すらろくにできずにサービスの解約へ至ることです。
まず第一に、あくまでもデータは自社、初期設定や運用までの設計はシステム会社に協力してもらうという棲み分けをすることです。
そのためにも、システムを使ってどのような目的を叶えていくのか、どんな入力項目を用意し、どのような分析をしていくのかといったことを事前に決めておく必要があります。システム導入を決める際には、その辺を一緒に取り組んでくれる企業を選択しましょう。
また、日々データを蓄積していくのは個々の担当者です。
各営業や担当者のコアタイムを邪魔しないためには、目的も決めずにやたら項目を増やすことを辞めることです。
「この項目、蓄積して本当に価値があるだろうか?」「これを入力するのは負担にならないだろうか?」など、一つ一つちゃんと吟味していくことが大切です。
結局、生のデータをちゃんと蓄積していかなければ、システム導入の効果は望めません。
こちらのホワイトペーパーでは、そういったDXツールの導入手順について解説しております。
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