※この記事のアイキャッチ画像は、DALL·Eで生成しました。
「ダイバーシティ」というキーワードが一般的に流行っていますが、本当の「ダイバーシティ」は人種や性別などの外見の違いだけを意味するものではなく、ライフスタイルの違いや考え方、経験、働き方などの多様性を含むものです。
今回の記事は、多様化する「女性消費者」をテーマに、ライフスタイルの違いによる行動の変化や現代における概念の変化によって生まれたプロファイルについて考察します。
この記事のインデックス
男女のライフタイムの違いを意識する
以下は男女のライフスパンの違いを簡単にイメージ化したものです(男女のライフスタイルを固定的に定義するものではありません)。
一般的に男性はシンプルかつ直線的なライフスパンを送りますが、女性は結婚や育児などのタイミングで、複雑かつ多様なライフスパンを経験することがあります。
これらの違いをマーケティング的に捉えた場合、誰をターゲットとするかによって異なります。
すなわち、「何を購入するか?」は、そのとき「その人の人生に今何が起きているのか?」で左右されるということです。
「キレイ、美しい」の概念変化
以前は「キレイ、美しい」というイメージは、見た目の美しさにフォーカスされていました。
しかし、2000年後半に入ると、「ヘルスコンシャス」という表現が使われるようになり、美と健康の両方を意識的に整えていくことが「キレイ、美しい」であると変化してきました。
エディブル・フラワーやハーブティー、スマートトラッカー(スマートウォッチなど)、ヨガ、パーソナルトレーニングジム、エクササイズグッズの充実など、これらの変化に市場が対応することで伸びているビジネスかと思われます。
初期は女性中心のムーブメントでしたが、市場が成熟してきて男性の間にも広がっているのが現状です。
今では、ただ健康に暮らすということではなく、より健康的で美しくという考え方が主軸となりつつあります。
このウェルネス産業は、4.9兆ドル以上の世界市場規模がある(2019年)と言われています。
グローバルウェルネスインスティテュート(Global wellness Institute:国際ウェルネス機構)発表
また、モデル業界でも、若いほうがいいとか外見がキレイな方がいいということではなく、内面「自分磨き」にフォーカスし、外見の美しさよりも「生き方」に価値を見出す傾向が見られるようになりました。
商品価格+時間予算が購入基準
消費者は物を購入する判断基準をその商品の金額だけで考えているわけではありません。特に女ゴコロを読み解く上では、重要な要素です。
たとえば、デジカメが1万円以下で買えたとしても、それを持って出かける為の費用や労力、時間というのを頭に思い浮かべます。特に普段家計を任せられている主婦にとって、トータルコスト(TCO)が合うかどうかは大きな問題なんです。
しかし、この時間予算という考え方は、その方が置かれたライフタイムによって変化します。
企業がどのライフタイムのユーザーをターゲットにするかによって、アプローチ方法を変える必要があります。
アプローチ方法について、たとえば、分かりやすく「食」をテーマに考えます。
- スーパーの食材を使ったレシピを人気料理家から学べる料理教室
- 時短レシピをウェブサイトやネット動画で提案
- 食材の宅配や冷凍食品の強化
- イートインコーナーの併設や店員との会話重視型接客を強化
1の施策は30代の復職待ちのママさんや70代のヘルシー重視のシニア向けに。2、3の施策は育児と仕事の両立で多忙なママさんに。4は60代以上のシニア向けになど、ターゲットのライフタイムに応じた戦略が必要です。
商品とこのような施策を組み合わせることによって、消費者の時間予算に対する考え方も含めて自社のサービスとすることが重要です。
LIFE SHIFT〜人生100年時代の不安
この図は人生100年時代のライフタイムに伴い、人々が不安と感じることのタイムラインをイメージしたものです。ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。
その中でも、特に女性は男性よりも長生きであるという統計も出ていますから、生涯結婚しない世帯が増えている現代、この不安の解消は非常に大きな関心ごととなっています。
保険会社が勧めている90歳以上でも入れる保険やシニア人材の再教育(リカレント教育)や企業の高齢者雇用制度など、これらに応じた様々なソリューションが生まれています。
健康寿命という考え方
WHOではただ長生きするのではなく、健康で長生きするという基準「健康寿命」も提唱されました。健康寿命とは、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間のことを指します。
しかし、現在の統計では日本ではこの寝たきりの期間が欧米各国と比べても長く6年以上に渡るそうです。
2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっており、2001年から男性の方が女性より健康寿命は延伸しており、男女差も若干縮小しています。
この健康寿命を延伸するためのソリューションは市場価値が高いのみならず、企業の存在価値(パーパス)にも大きな価値を与えるはずです。
ヘルスケアビジネスはこれからの世界にとって重要かつ大きな成長産業であり、様々な視点からまだまだ産業が生まれる余地があるでしょう。
罪悪感(ギルト)の払拭と消費の関係性
皆さんはどんなときに罪悪感(ギルト)を感じるでしょう?
夜遅い時間にカロリーの高いものを食べたくなったときや夜遅くまで飲み歩いてしまったとき、貯金ができず浪費してしまうこと、子供と十分に遊んであげられていないことなど、考えればキリがないはずです。
以前、ヴァズ社、マルコメ社が日本国内で調査したアンケート結果によれば、76.8%が食事をするときに罪悪感(ギルト)を感じると回答したそうです。食事は美味しいものを楽しく食べたいと考える一方で、健康のことを考えると高カロリーなものや脂っこいもの、スイーツなどを食べた後には罪悪感が残ります。
自分のこと
- 遅い時間に食べたら肥るし、美容に良くない
- 栄養バランス良いものを子供に食べさせていない
- 化粧落とさずに寝ちゃった
- 半身浴しなかった
- 運動しなかった
- イライラを恋人や夫にぶつけてしまった
時間のこと
- 夜遅い時間まで飲み歩いた
- 休日、何もせずダラダラして過ごした
- 自分だけ楽しい時間過ごした
- 毎日忙しくて子供と遊んであげられてない
お金のこと
- 美容ケアに多くのお金を使ってしまった
- 貯金せずに旅行費にあてた
- スーパーでついつい予定外の食材を多く買ってしまった
- ポイントカード忘れて買い物してしまった
一般的な罪悪感を分類すると、大抵は「自分のこと」「時間のこと」「お金のこと」の3つに集約されます。
しかし、これらのネガティブな思考は他人にとってはどうでも良いことが多く、基本的に自分自身が納得していないところに罪悪感の要因があります。
その納得感を得ていただくために、夜遅く食べてもヘルシーなカップ麺やスープ、肉の代わりに大豆を使った大豆ミート、24時間落とさなくてもOKなほど肌に優しいコスメ、親子で参加できるヨガレッスンなどのソリューションが生まれています。
人がこのギルトを感じる事柄を少しでも軽減する方法が、楽しく消費する意欲に繋がります。
実はヘルスケアや美容、100円均一ショップなども、お金や時間を節約して部屋や身なりを清潔にすることや体の不調を治して元気になることで、このギルトの払拭に繋がっているのです。
モデルに対する価値観の変化
最近ファッション業界にもダイバーシティの波が来ています。
たとえば、以前はメディア露出が少なかった「プラスサイズモデル」や「シニアモデル」、「トランスジェンダーモデル」など、多様なモデルが採用され続けています。
まさにこれらのモデルに見られる魅力は、使い古されたステレオタイプのそれではなく、型にはまらない美しさをイメージしています。美の概念は1つだけではなく、そのプロダクトによって、多様な価値観をイメージできるものでなくてはなりません。
最近は外見よりも内面の「自分磨き」にフォーカスしていたり、外見の美しさよりも「生き方」に価値を見出す傾向が見られます。
女性は”共感”する生き物
このように、従来の考え方でどんなに魅力的な商品・サービスを開発しても、最後の「魅せ方」で失敗すると、消費者のエンゲージは落ちてしまいます。
女性にとって、企業が思う以上に「社会問題」や「安全安心」、「もったいない」といった感覚が購買判断に影響する重要な要素となります。
- 食の廃棄問題
- 動物実験
- 劣悪な労働環境
- 安心・安全・清潔な環境での調理工程
また、特に女性に対しては、細部に至るまで徹底した配慮が必要です。
- 飲食店の間仕切りが狭い
- 液体調味料のフタが開けにくい
- メルマガ大量配信や解除のしにくさ
- スーパーのショーケースの清潔感
- 分かりにくいPOPや専門用語のオンパレード接客
このような配慮にかける営業活動により、買うか買わないかが決まってしまうことがあります。
企業は機能(スペック)による差別化をやめ、他社とは異なるポイントで差別化を実施することが大切です。異なるポイントとは、ターゲットのプロファイルに応じた感性価値を作り出すことです。
抽象的ではありますが、主なポイントを3点挙げます。
- ブランディング(魅せ方の工夫)= 感性価値
- キャッチーでかわいいと感じる文言
- 社会情勢・トレンドキーワード・話題の数字などでPR
感性価値を生み出すためには、使い手の「こだわりや興味」を理解し、それを満たすものを届けるという感性に伝わる物語が必要になるのです。
ここまで書いてきたように、市場は成熟し、人々の感性も多様化しています。
ライフコースの多様性、価値多様性、超高齢化社会などの変化を見据えたマーケティングが益々必要となってくることでしょう。
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