※この記事のアイキャッチ画像は、DALL·Eで生成しました。
「古着」と聞いて、チープなイメージを思い浮かべる方は既に感覚が古いかもしれません。
いまや、古着マーケットは世界的に拡大を続けており、米国オンライン古着ショップの大手「スレッドアップ(thredUP)」が調査したレポート「2022 Fashion Resale Market and Trend Report」によると、世界の古着マーケットは2021年から2022年の1年間で約24%成長し、2026年までに127%の成長が見込まれると予想されています。
この記事のインデックス
ファストファッションは資源に優しくない
アパレルマーケット全体で見ると、古着は3倍の速度で成長が見込まれているそうです。
昨今のファストファッションにおける大量生産、そして資源の大量消費。
SDGs の観点から見れば、もはや価値観の大きなズレがあり、資源循環型社会を作り出すという意味合いからも古着が脚光を浴びています。
ちなみに、こんな記事を書くのは、私自身20年来の古着好きだからです。とはいえ、今回はマニアックな視点ではなく、マーケティング的な視点で記事を書きました。
コロナ禍が引き金となったリサイクル消費の加速
コロナ禍による外出規制やロックダウンにより、消費者はこれまで以上に消費の意味(お金をどう使うべきか)を考えるようになってきたと言われています。
これにはオンラインを使ったアパレルの個人転売(P2P)が盛んになってきたことも一つの要因と言えます。
日本ではメルカリなどが有名ですが、スレッドアップ(thredUP)は、膨大な洋服を効率的に回収し再販できる仕組みを開発しています。
この手法はRaaS(Resale as a Service)と呼ばれるもので、それらのサービスをブランドに提供することで循環型モデルの確立をサポートしています。
また、消費者から出品される古着のコンディションや価格は「Vue.ai」というAI搭載の画像処理システムなどを利用し決めているのが特徴です。
サステナブル、エシカルとは?
サステナブル(Sustainable)とは、「持続できる」「耐えうる」「持ちこたえられる」などの意味です。SDGsでは、この意味を用いて人間・社会・地球環境の持続可能な発展としています。
対してエシカル(Ethical)とは、「倫理的な」「道徳的な」という意味を持ち、「社会的な模範」を指します。
サステナブル同様、SDGsでは環境保全や地域・社会への考慮という意味で使われ、それに伴って「エシカル消費」という言葉も誕生しています。
エシカル・ファッションとは?
古着などのリサイクル消費は「エシカル・ファッション」として、「エシカル消費」の一部と考えられています。
つまり、自然や動物、人、社会に優しいファッションが、エシカル・ファッションということになります。
エシカル・ファッションの推進団体「Ethical Fashion Japan」は、エシカル・ファッションについて8つの項目を定義しています。
フェアトレード(Feir Trade)
対等な取引で、認証を受けたフェアトレードで十分な生活賃金、適切な労働環境を確保して生産されていること。
オーガニック(Organic)
有機栽培で生産された素材を使っていること。
アップサイクル&リクレイム(Upcycle&Reclaim)
捨てられるはずだったものを活用して作られていること。
サステナブル・マテリアル(Sustainable Material)
環境負荷がより低い天然素材、リサイクル繊維、エコな化学繊維などを活用すること。
クラフトマンシップ(Craftmanship)
伝統的な技術を取り入れ、文化を未来へ伝える取り組みのこと。
ローカルメイド(Local Made)
地域に根差した産業を活性化させて雇用を創出し、技術の伝承と向上を目指すこと。
アニマルフレンドリー(Animal-Frendly)
動物実験をしていないなど、動物の福祉に配慮していること。
ウェイストレス(Waste-Less)
ライフサイクル各段階での無駄を削減していること。
ソーシャルプロダクツ(Social Projects)
NPOやNGOへの寄付や雇用創出など、社会貢献と関わりがある製品であること。
非常に細かな定義がされていますが、特に大量生産されていないヴィンテージ・ファションにはこれらの要素を含んだものが多いのが特徴です。
Z世代が後押しする循環型消費
Z世代と呼ばれる若者たちの多くは、消費行動を少し違った視点で捉えています。
常にモノや情報が溢れている世界にいきなり生まれてきた彼ら。そんな彼らは、モノに対して「新しい」「古い」という価値観を持っていません。
Z世代は安く買える洋服を多く所有することよりも、自分がときめきを感じるお気に入りの洋服を大切に着回すことや、新品の既成品には無い自分らしいファッションを楽しむことに価値を感じる傾向があります。
物心がついた頃にはファストファッションが当たり前となっていたZ世代にとって、我々の世代が「古い」と感じるモノも新しいのです。
最近は特に、1990年代後半〜2000年代頃に流行した「Y2Kファッション」がトレンドです。
昔から言うように、トレンドは常に循環しています。
音楽もファッションも、昔生み出されたものが時代の流れの中で循環し、それが新しい世代向けにパーソナライズされ、トレンドとなっているのです。
物心がついた時から温暖化などの環境問題が身近にあった世代にとって、サスティナビリティに貢献することは当たり前の価値観なのです。
古着ショップも進化している
古着で有名な街と言えば、下北沢や高円寺です。
特に高円寺は昔から古着店が多かったのですが、2000年代から急激に店舗が増え、今では駅南側周辺だけでも100店舗以上あると言われています。
高円寺の特徴はヴィンテージショップが多いことです。
下北沢がリーズナブルな古着ショップを中心としているのに対して、高円寺はユーロヴィンテージからアメリカヴィンテージまで古着マニアが唸るお店が軒を連ねています。
ヴィンテージ・ファッションとは?
ヴィンテージとは、元々良いものを長く使えるようにと手間をかけて生産された服が多く、大量生産されていたものではなく、古くからあるアパレル工場などで、ひと手間かけた手法で仕立てられた服です。
今では手に入らないような仕立てや技法が使われたジッパーやボタンが施されていることが多く、一度一目惚れしたら購入するしかない一点物が多いのも特徴です。
また、長く使えるようになっているため、経年劣化による個性が出せるのもヴィンテージの魅力と言えます。
それだけではなく、他の地域にもあるセカストやドンドンタウンのようなヴィンテージからブランド品まで幅広い取り扱いがあるショップであっても、ショップスタッフのレベルが高いことが特徴です。恐らく、高円寺ならではの人選をしているのでしょう。
Web3.0とサステナブル・ファッションが世界を救う?
資源循環型の社会を推進することは、世界中の多くのステークホルダーにとってベネフィットを生み出します。もっと社会的に助成金や投資を盛んにしていけば、この分野はさらに大きく躍進し、個人間売買(P2P)を盛んにしていくことでしょう。
これから具現化していく「Web3.0」の世界は、ブロックチェーン技術を活用した非中央集権型のインターネットです。
中央集権の組織が存在しない分散型の世界では、個人情報をユーザー同士で管理できるようになります。現在、まだ法整備やサービスの開発が必要ではありますが、将来益々、個人対個人のビジネスが中核になっていくでしょう。
まさに、高円寺のような個性あふれるリユースショップが、インターネット上に溢れた世界が広がるかもしれません。
個人がSNSのようなエリアで自身のプロフィールや生活感、価値観などをシェアし、そのすべての価値観に共感を覚えた消費者がモノを購入するといった未来もそう遠くはありません。
今後、手持ちのモノをリユースするという取引は、さらに当たり前のものとなってくるでしょう。
以前書いたエシカルマーケティングに関する記事です。合わせて御覧ください。
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