私たちの住む日本には豊富に物やサービスがあり、店頭はもちろんのこと、インターネットやSNSにも多くの選択肢が陳列されています。私たちは日常的にその無限の選択肢の中から、苦労しながら“選択”を重ねています。
この記事のインデックス
1日に選択する事柄は意外に多い
普段、皆さんは1日にいくつの選択をしているかご存知ですか?
典型的なサラリーマンが1日に選択する数は平均約70回、
米コロンビア大学調査結果より
CEOがこなす1週間の職務は約139個あり、
そのうち50%の職務について、
9分以内に意思決定されていることが分かりました。
1日にこんなに多くの選択をしている方々へ、こちらが何のサプライズも無い平凡な選択肢を提示することが、いかに非効果的かということが理解できます。
選択肢は多ければいいのか?
たとえば、ご近所のスーパーマーケット。皆さんはどのくらいの商品数が並べられているかご存知ですか?
なんと、平均的な大型スーパーでは、約12,000~15,000SKUの商品を陳列しているといわれています。
- SKU(Stock Keeping Unit)
商品管理上これ以上細かく区別のできない最小の商品の単位 - 米コロンビア大学調査結果より
あらかじめターゲットとしている商品はあるにしても、こんなに多くのアイテムの中から毎日食卓のおかずを選んでいる主婦の方には頭が下がりますね。
ここでひとつクイズを出題させてください。
スーパーマーケットの売り場で、以下の2つの方法で新発売のヨーグルトの試食を行いました。
- 6種類の試食ヨーグルトを用意
- 24種類の試食ヨーグルトを用意
A:より多くのお客様に試食していただけたのはどちらでしょうか?
B:より多くのお客様にお買い求めいただけたのはどちらでしょうか?
Aの答えは、①の方が40%の試食率、②の方が60%の試食率でした。それに対し、Bの答えは①が6名お買い上げだったのに対して、②はたったの1名でした。なんと、購入結果としては実に6倍もの差がついたのです。
つまり、試食をさせることが目的なら、選択肢の多いほうが結果が望ましく、実際に買っていただくことが目的なら、選択肢が少ない方が有利であったという結果でした。
このことから分かったことは、人々は選択肢が多すぎると選択をあきらめてしまうということです。
また、極めて重要な決断をする場面でもこれと同様に、選択することを諦めてしまうケースが多々あるということが分かっています。
つまりこれらは、情報収集が必ずしも選択後の満足度アップには繋がらないということを示しています。
コンビニエンスストアや小型スーパーで商品の選択肢がせいぜい2〜3種類しかないのは、大変合理的に購入意欲を掻き立てているのだということが理解できます。
選択の4Cテクニック
上記はひとつの実験結果ですが、同様に人が選択をしやすく仕向けるためには、4つのテクニックがあることが分かっています。
排除すること(Cut)
余計な選択肢を取り除きます。
こういうと、売れなくなってしまうと心配する人が多いのですが、実はよけいな選択肢を排除したほうが、逆にセールスはあがると実証されています。
選択肢が多くなることでお客様の手間はもちろんのこと、それを運用する側のコストも上がります。
コストには説明するスタッフの手間や売場を作る手間も含まれます。
具体化すること(Concretization)
それぞれの選択肢の違いを具体的に示します。そうすれば選択する人はそれぞれの違いをよく理解でき、より簡単に選ぶことができます。
それぞれの選択肢にリアリティがあると、選択する人のモチベーションを上げることができます。
カテゴライズすること(Categorization)
たくさんある選択肢をカテゴリー分けすれば、より選びやすくなります。
あくまでも、選ぶ人にとって価値があり、分かりやすいカテゴリーを作ることが基本です。
人は種類が豊富にあるよりもカテゴリーが多い方が、より種類が豊富で選びやすいと感じます。
その場合、「選択の基準は何か」を明確化することがポイントです。
少ない選択肢から始めること(Condition for comolexity)
単純なことから始め、次第に複雑にしていくと、選択することがより簡単になります。たくさんのことについて選択しなければならないとき、選択肢の少ないものから始めて次第に選択肢の多い選択に進めば、その逆の順番で始めるより、うまく選択することができます。
人は簡単な選択から始めると、「自ら選択している」という意識が芽生え、モチベーションが上がり、積極的に選ぼうとします。
選択に工夫を凝らした様々な事例
それでは、上記の4Cテクニックを使った様々な事例をご紹介します。事例掲載許可を頂いているわけではないので、企業名・サービス名は架空の物を表示しております。
カテゴライズの事例
ある大型書店チェーンの事例です。
この書店は、創業時からの事業コンセプトを『ライフスタイルの提案』をする企画会社であるとしています。
この書店では店舗を出店する際に、その町を歩く人々のライフスタイルに沿ったカテゴライズを実践しています。
たとえば、料理フロアなら料理に関する道具・食品など、本に限らず同じコーナーの中で取り扱いをしています。
さらに、お店にはカテゴリーごとにコンシェルジュを配置。訪れたお客様へ向け、ワークショップも開催しているという徹底ぶりです。そのため、他の本が棚に並んでいるだけの書店と比べ、ご来店のお客様にその本のカテゴリーに対する体験までさせてしまうのです。
私もこの書店へは度々行くのですが、ただ本がたくさん並んでいるよりも、楽しく時間をかけて選ぶことができるので、つい余計なものまで衝動買いしてしまうことも多々あります。
排除することの事例
これは私が以前、家電量販店に勤めていた経験からの事例です。
その会社では、出店する地域の競合店舗に見た目のボリュームで負けないようにしながらも、不用意なラインナップを削減することに力を入れています。
たとえば、電球ひとつとってみても、不用意に選択肢が多すぎるとお客様が迷われてしまい、結局購入せずに店舗を出てしまうことがあります。そのうえ、種類が多すぎると店員への説明リクエストを増やしてしまうことになり、大変非効率です。
この会社では店舗ごとにアイテムごとのSKUが定められており、ある店舗の特定のカテゴリーでそのSKUを超えた在庫が発生すると、他のより大型店舗へその在庫を移動するルールがあります。
もちろん、前述の大型書店のように、同じカテゴリーの商品であっても、さらにそのカテゴリーを VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を使って細分化し、できるだけお客様が選択肢を少なくできるように店頭づくりを行っています。
少ない選択肢から始めることの事例
これが最も分かりやすいのは BTO(ビルド・トゥー・オーダー)を使って、PCや車などの高額商品をカスタマイズして購入できるようにしているサイトです。
こういったサイトでは、最初の選択肢を出来る限り少なめにし、最初の段階を選択した後に、徐々に選択肢を増やしていく構造になっています。このようにした方が、顧客が途中で選ぶことをあきらめることが起こりにくくなるのです。
そしてこれは、アプリの UI/UX へ工夫を凝らすことでも同じような結果が出ることが分かっています。最初の選択肢がより分かりやすく簡易的な方が、人はその先の操作もあきらめずにやり抜くことができるのです。
他に身近なところでは、コーヒーショップでメニューを選ぶ際に、コーヒーそのものの種類が豊富であるよりも、コーヒーを選んだ後にカスタマイズが豊富な方が選びやすいのではないでしょうか。
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