【商品企画・商品開発にお困りの方必見!】プロダクト価値を生み出す仕組みとは?

【商品企画・商品開発にお困りの方必見!】ブランドを生む仕組みとは?

これまで、「商品価値とは何か?」、「体験価値を生む仕組みとは?」という2つのテーマで記事を執筆してきました。

今回は、企業が顧客の状況変化をサポートし、プロダクト価値を生み出す仕組みについて解説していきます。

プロダクトの前にブランドがある

本題に入る前に、まず顧客がどのように特定のプロダクト・サービスに辿り着くのかについてお話します。
たとえば、皆さんがお部屋の家具を購入したいと思ったとき、まず最初に思い浮かぶのはどんな情景でしょうか?

北欧インテリアのイメージ
北欧インテリアのイメージ
  • イタリアのエレガントで美しい装飾の家具
  • 北欧のシンプルでナチュラルテイストな家具
  • ヴィンテージ感漂うアメリカンテイストの家具

このように、まずはインテリアや家具のブランドやイメージから選ばれると思います。
つまり、顧客がプロダクトを選定するプロセスの手前には、必ず「ブランド」の選択があるということです。

これは飲食店を選ぶ場合も、ビールの銘柄を選ぶ場合も同様です。
有形物か無形物かや、BtoCかBtoBかも関係ありません。
明確にブランドが脳裏に浮かばなくとも、そのブランドが形成している「ブランディング」がイメージとして顧客の脳裏に浮かぶのです。
以前の記事で、商品価値を決めるのは開発者ではなく顧客であると言いましたが、商品価値創出の前提条件には、必ずブランドがあるということを認識しなければなりません。

さらに上位を見ると、そこにはカテゴリーという概念があります。

概念とカテゴライズ
概念とカテゴライズ

人間の脳は物を認識する際に、必ず概念から順に選んでいきます。

概念はその人の文化や価値観によって異なりますから、国・地域や性別、年齢といった デモグラフィックジオグラフィック 、価値観や趣向に関連する サイコグラフィック といったカテゴライズが少なからず影響を及ぼします。

そこで自社のプロダクトがそのカテゴリーに含まれなければ、そもそも顧客の選択肢に上がらないということです。
つまりプロダクト・サービスが選択肢に入るかどうかは、顧客の プレファレンス(Preference)によって決定づけられるということです。

ただ、一度できたカテゴリーは永遠ではありません。
市場が変化し、顧客ニーズが変化する限り、次から次へと細分化された新しいカテゴリーが生み出され、従来のカテゴリーはより大まかな概念として残っていきます。
年齢や価値観でカテゴリーが異なっていくのはそのためです。

プレファレンスを勝ち取る:ニーズとウォンツの理解

顧客にどんなに明確なニーズ(必要)があっても、それを満たすプロダクトやサービスがなければ何も始まりません。
ニーズとは、人間が生きていく上で不可欠な欲求であり、例えば「健康でありたい」「快適に過ごしたい」といったものが挙げられます。

ニーズとウォンツ
ニーズとウォンツ

しかし、顧客が実際に求めるのはニーズそのものではなく、ニーズを満たすための具体的な手段や商品、サービス、つまりウォンツ(欲求)です。

例えば、「健康でありたい」というニーズに対して、「バランスの取れた食事がしたい」「運動をしたい」というウォンツが生まれます。

顧客のプレファレンス(選好)を勝ち取るためには、ターゲットに合わせて絞り込んだ打ち手が必要です。顧客のニーズを的確に把握し、それに応えるウォンツを刺激する商品やサービスを提供することで、顧客満足度を高め、競争優位性を確立することができます。

企業が持つリソース

企業が顧客のニーズを受け止めるために提供できるリソース(資源)には、主に次のようなものがあります。

  • 素材・材料
  • 製品・サービス
  • コンテンツ・ソフトウェア
  • オペレーション
  • 技術力
  • 人材・専門性
  • コミュニケーション

リソースと言っても、その形態は様々です。例えば、料理に使う材料や、製品の製造に必要な素材、半導体デバイスなどは有形のリソースです。一方で、アプリケーションやクラウドサービスのような無形のリソースも存在します。

これらのリソースが効果的に統合・設計され、顧客の状況に適切に適合することで、顧客体験価値の創出、そして市場や顧客ニーズの変化への対応という機能を発揮します。

競争優位に立てるファンクションは何か?

まず、自社リソースで何が提供できるか、つまりどのようなファンクションを提供できるかという視点から検討を始めます。そして、そのファンクションが、顧客がどのような状況変化を望んでいるかの手助けになるか、という順序で検討を進めます。

なぜ自社ができることから考えるかというと、最初にターゲット顧客の状況理解から入ると、自社リソースでは実現できないファンクションを考案せざるを得なくなる可能性があるからです。

その結果、参入障壁は著しく高まり、同じファンクションを提供する競合他社との競争において、優位性を維持することが困難になるでしょう。

パーク24の事例

駐車場ビジネスを全国展開するパーク24の成功事例はよく知られています。直接インタビューしたわけではないため、以下は収集した情報に基づいてまとめたものである点をご了承ください。

後発ながらもパーク24がカーシェアリング事業で成功を収めた要因は、主に以下の2点です。

タイムズカー
タイムズカー

第一に、自社で管理する駐車場という豊富なリソースを保有していたこと。第二に、マツダレンタカーをグループ傘下に加えたことで、車両管理ノウハウという新たなリソースを獲得したことです。

これらのリソースを基盤に、他社よりも着実にカーシェアリングの車両保有台数を増やせると考えたことが、事業参入のきっかけになったそうです。

彼らが主なターゲットとしたのは都市部の法人顧客でした。特に東京都心部では、車両を保有するよりも土地にかかるコストが圧倒的に高額です。例えば、100万円の車両をリースした場合、月額費用は2万円程度ですが、駐車場料金は月額4~5万円にもなります。一方、パーク24はタイムズ駐車場のスペースを有効活用することで、駐車場代をカーシェアリング事業の原価に直接反映させることなく、ローコストでの事業展開を可能にしました。これが大きな競争優位性となりました。

現在、パーク24はレンタカーとカーシェアリングを「タイムズカー」というモビリティサービスとして展開しており、利用時間や目的に応じた柔軟な使い分けが可能です。さらに、サービスラインナップの拡充により、ユーザーメリットは一層向上しています。

当社も法人契約を結んでいますが、月額基本料金が不要であること、車両資産を所有する必要がないことから、駐車場代やメンテナンスコストが発生しません。加えて、地方都市にもカーシェアリングの拠点が多く、公共交通機関、宅配便の営業所留め、そしてタイムズカーを組み合わせることで、地方の現場へも効率的に移動できるというメリットを享受しています。

つまり、顧客のニーズ、状況変化、そしてウォンツの関係性は以下の通りです。

駐車場料金・駐車スペースの削減ニーズ
都市部では駐車場の空きが少なく、利用料金も高額。法人においては、駐車場のスペース確保も経営課題となっている。
混雑する駐車場
管理業務効率化ニーズ、管理コスト削減ニーズ
車両管理業務の煩雑さ、燃料費、車検代、自動車税などの車両維持費が企業経営を圧迫している。
管理業務の効率化
働き方の多様化が進展
取引先や現場への直行直帰、リモートワークからの出張対応など、従業員の働き方が多様化している。
働き方の多様化
SDGsや環境保全への意識が向上
政府が2050年のカーボンニュートラル実現を目標とする中、社用車のCO2排出量削減に取り組む企業が増加。移動手段を公共交通機関とカーシェアリングに切り替えることで、CO2排出量削減に貢献できる。
SDGs推進への意識の高まり

これらのニーズと状況変化に対するウォンツ (タイムズカーの提供価値)

  1. タイムズパーキングを中心とした全国13,000拠点での展開
  2. 24時間いつでも自宅近くから利用可能、法人契約では月額基本料金不要
  3. 運転見える化サービスによる安全運転支援、燃料消費量削減
  4. CO2排出量の少ないハイブリッド車、EV車の積極的な導入
  5. 自動車保険、事故発生時のサポートを含む包括的なサービス提供

タイムズカーは、自社が保有するリソース・アセットを最大限に活用し、顧客の不満解消や状況変化に的確に対応したサービスと言えるでしょう。

ニーズとウォンツを的確に理解し、顧客へ適切な情報発信を行うことで、顧客は潜在的なニーズに気づき、それを満たすための具体的な手段として、商品やサービスを探索するようになるのです。

プロダクト・サービス価値創造のプロセス

パーク24の事例を基に、具体的な商品・サービス価値創造のプロセスについて考察してみましょう。
なお、以下は私共が収集した情報を基にまとめたものであり、直接的なインタビューに基づいたものではない点をご了承ください。

ターゲット顧客は主に都市部の法人です。彼らが直面している状況変化と、それによって求める理想の姿を以下に示します。

まず、顧客の状況変化として、次のことが挙げられます。

ターゲット顧客
  • 都市部における車両所有コストの増大:車両本体価格よりも、駐車場用地のコストが大きな負担となっている。
  • リモートワークの普及:コロナ禍以降、リモートワークが定着し、従業員が自宅から直接顧客先へ移動する体制が求められている。
  • 環境意識の高まり:日本政府が2050年カーボンニュートラル目標を掲げる中、中堅企業においても社用車のCO2排出量削減が喫緊の課題となっている。

そしてこれらの状況変化にマッチングするであろう仮説としては、「オンデマンドサービス利用によるコスト削減」「フレキシブルな使い勝手を実現する車両サービス」「環境保全に貢献できそうなHEV・EV車両の利用」を挙げてみました。

次に、上記の顧客ニーズに対し、パーク24が保有するリソースと、それによって提供可能なファンクションは以下の通りです。

まず、パーク24のリソースとして以下のものが挙げられます。

  • 全国に展開する24時間営業の駐車場ネットワーク
  • マツダレンタカーとの連携による車両管理ノウハウ
パーク24

そして競争優位に立てるファンクションとして以下のようなものがあります。

  • 24時間全国対応のカーシェアリングサービス
  • 月額固定費不要のオンデマンド型料金体系
  • 自動車保険付帯サービス
  • 法人顧客向け車両管理コスト削減ソリューション

上記の要素が組み合わさり、顧客ニーズと提供価値が合致することで、プロダクト・サービスの価値が創造されます。

しかし、顧客の状況変化は常に進行するため、サービス提供者は顧客との継続的な共創関係を構築し、サービスをアップデートしていく必要があります。

私が知る限り、パーク24は顧客の声に耳を傾けながらサービスを継続的に改善し、高い競争力と徹底したコスト管理によって業績を拡大し続けている企業の一社であると認識しています。

顧客のどんな状況変化に対応すべきか

リソースを活用して提供可能なファンクションから検討を開始する方が良いと前述しましたが、状況によっては、顧客の状況変化から検討せざるを得ない場合もあります。

そのような場合、複数考えられる顧客の状況変化の中から、どの状況変化に対応すべきかという課題が生じます。

例えば、特定の顧客に特有の状況など、ごく一部の顧客にしか当てはまらない状況を選んでしまうと、非常にニッチな市場への対応となり、大きなビジネスには繋がりにくいでしょう。

顧客の状況変化は事実上無限に存在するため、当然ながら、その全てに対応することは不可能です。そこで、対応すべき状況変化を選定する上で着目すべき考え方として、「モメンタム(推進力)」「ロバストネス(堅牢性)」「インパクト(影響力)」という3つの評価観点をご紹介します。

まずモメンタム(推進力)とは、その状況が今後社会的に拡大していく可能性、すなわち推進力があると感じられるかという観点です。主に、市場調査データやアンケート結果などから、その状況の発生頻度や将来的な動向を予測できると考えられます。

次にロバストネス(堅牢性)とは、現在認識されている状況が、社会的な影響などによって容易には変化しない、堅牢性を備えているかどうかを評価する観点です。言い換えれば、一時的な流行ではなく、しばらくの間は普遍的に存在し続けると考えられる状況であるかどうかを判断します。

最後にインパクト(影響力)とは、その状況変化に対応することで、社会にどれほどの影響力(インパクト)を与えられるかという観点です。特定の事業や活動に取り組んだ結果として、社会や環境に大きな変化をもたらす可能性を秘めている状況を指します。

一般的に、インパクトが大きい状況変化ほど、多くの顧客が共通して抱える不満の根源となっている可能性が高く、その不満が長期間解消されずにいる背景には、多くの場合、社会構造的な要因 が存在します。もし、そのような構造的な不満を解消できるプロダクトやサービスを開発できれば、より多くの顧客に貢献できるはずです。

顧客にとって理想的な体験価値を作り出すために

顧客の状況に単にマッチングしたファンクションを提供するだけでは、どうしても薄っぺらで物足りない体験に終わってしまいます。

そうした事態を避けるために最も重要なことは、体験価値の創造を「理想」に振り切って考えることです。理想を追求せずに、現状や制約の中で実現可能なことだけを行っていては、真の競争優位を確立することはできません。

状況を分析・選択した後は、まずあるべき姿として最適案の理想像を掲げます。そして、その理想像と現実とのギャップを明確にし、埋めていくプロセスが不可欠です。その過程で、当初想定していなかったファンクションが必要になることもあり、それらを獲得・統合していくことで、より洗練された理想的な体験価値へとたどり着けるはずです。

そもそもの目的を見失うことがある
そもそもの目的を見失うことがある

もう一つ重要な視点は、顧客が求めるウォンツを選定した後に、そのウォンツが位置づけられる前後の階層を、繰り返し行き来することです。

このプロセスを通じて、顧客の真の目的、すなわち根源的な欲求とは何かを深く追求します。真の目的が明らかになると、当初ウォンツだと捉えていた回答が、必ずしも絶対的なものではなかったという重要な気づきが得られることがあります。

ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授による「ジョブ理論」では、「顧客は自らが達成したいジョブ(用事・目的)を完遂するために、商品やサービスを手段として“雇う”」という革新的な考え方が提唱されています。

これは、顧客にとって本当に価値があるものは、単に購入した商品そのものではなく、本質的には自身が抱えるジョブを達成するための有効なツールであるという示唆に富む洞察を与えてくれます。

つまり、顧客ニーズの根底にある、より上位の目的を可視化する努力をすることで、その目的を達成するための真の最適解とは何かという、より深い思考に到達することが可能になるのです。

より詳細な買い手のニーズに関する洞察については、以下の記事が参考になりますので、ぜひご覧ください。

次回の記事では、ここまでの内容を総括し、具体的なバリュープロポジションの作り方について解説する予定です。ご期待ください。

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▼略歴

  • 東京都世田谷区生まれ
  • 学生時代には経営・財務の分野を学び、建設・不動産業界で経理部に在席。
  • 家電メーカーにて直営店舗の運営、マーチャンダイザーを経験。PCのBTOビジネス推進やホームネットワークの普及推進、デジタル家電活用のセミナー講師、直営の免税店を経験。
    同時に、グループ企業のWEBマスターとして、ポータルサイト、eコマースサイトの制作・運営、情報セキュリティマネジメント、ナレッジマネジメントを推進。
  • 家電量販店にて情報部門リーダー、都心店舗の店長を経験。
    その後、店舗開発部で新店舗出店時のレイアウト設計やスタッフの育成、出店準備、VMDの企画・制作などを歴任。
  • システムインテグレーターとして、手術室及び血管造影室の画像・映像配信システムの開発・設計、エンジニアリングを担当。さらに、遠隔手術支援システムの企画・開発を担当し、専門誌へ医師の偏在問題に関する論文を寄稿。
    また、医療向けシステムやフェリーの設備を安全にリモートメンテナンスするソリューションを開発・運用。
    その後、会社のリブランディングプロジェクトへの参画、デジタルマーケティング組織の立ち上げ、メディカル組織のマネジメントを経験。
  • 論文 医師偏在の課題と向き合う遠隔手術支援ソリューション(CiNiiで検索
  • 論文 手術室の生産性向上に貢献する医療映像ソリューション(CiNiiで検索
  • 現在、企業向けにIT技術者育成セミナー(ネットワーク/ウェブデザイン等)を主催しております。